自律神経失調症とうつ病って、似てるけどどこが違うの?と疑問に思った方がいるのではないでしょうか。今回はそんな疑問にお答えしたいと思います。
目次
自律神経失調症とは?
自律神経失調症は、自律神経のバランスが崩れることによって心身に様々な不調が現れた状態を指します。日本心身医学会において自律神経失調症は「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変(形態的な変化)が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」と定義されています※。
つまり、何らかの症状があるにも関わらず身体疾患も顕著な精神障害も見られないということであり、自律神経失調症は精神障害であるうつ病とは違うものであるということになります。
自律神経失調症について知るために、まずは自律神経ががいったい何なのか、ということについて説明します。
※厚生労働省「こころの耳」Q&A:うつ病と神経症、自律神経失調症との違いは何ですか?
そもそも自律神経とは?
自律神経は、”人が意識して動かすことができない内蔵や血管といった生命に重要な機能”を制御している神経です。具体的には、相反する機能をもつ交感神経と副交感神経というものがあって、この2つがバランスを取りながら機能しています。
交感神経は、人が活動しているときや緊張しているときにより活発に機能します。例えば、運動をしたときや緊張したときに心拍数が上がったり汗が出たり血圧が上がったりするのは、交感神経が活発に機能するからです。
逆に副交感神経は、人が寝ているときやリラックスしているときに機能しています。例えば、寝ているときやリラックスしているときに心拍数がゆっくりになって呼吸も深くゆったりをしたものになるのは、副交感神経がより機能しているからです。
このように交感神経と副交感神経は反対の機能をもつため、バランスとしてどちらかがより優位に機能する関係にあります。この2つのバランスが崩れてしまい適切に機能しなくなると、様々な心身の症状が現れ、「自律神経失調症」と言われる状態に陥ることがあるのです。
自律神経失調症とうつ病、「症状」の違い
自律神経失調症とうつ病について調べると、どちらもよく似た症状のように見えるのではないでしょうか。それぞれの症状と、症状の違いについて説明していきます。
自律神経失調症の主な症状
自律神経失調症の主な症状は、身体症状と精神症状に分けられます。
身体症状としては、だるさ、耳鳴り、めまい、手足の痺れ・冷え、ほてり、動悸、食欲低下、下痢・便秘、不眠、頭痛、肩こりなどの幅広い症状が挙げられます。
精神症状としては、イライラ、不安、焦り、集中力の低下、落ち込み、情緒不安定といった症状が挙げられます。
うつ病の主な症状
うつ病の主な症状も、身体症状と精神症状に分けられます。
身体症状としては、不眠あるいは睡眠過多、食欲低下または増加、体重減少あるいは増加、疲労感、頭痛といった症状が挙げられます。
精神症状としては、イライラ、不安、焦り、興味や喜びの喪失、注意力や集中力の低下、抑うつ感、意欲の低下などが挙げられます。
うつ病と自律神経失調症における症状の違い
うつ病にはなく自律神経失調症には見られる症状としては、耳鳴り、めまい、手足の痺れ・冷え、ほてり、動悸といった身体症状が挙げられます。
一方で、うつ病にはあって自律神経失調症には見られない症状は、一定のレベルを超える精神症状です。例えば、イライラや不安、焦り、抑うつ感の背景に深い絶望感を有していたり、死を考えてしまう程に追い詰められていたりすることがうつ病の場合にはあります。ただし、うつ病の症状の一部として、自律神経失調症の症状が出現する場合があります。
自律神経失調症とうつ病、「原因」の違い
症状には似ているものもあれば違いもありましたが、原因はどうでしょうか。
自律神経失調症とうつ病はどちらも精神的ストレスによって引き起こされるという共通点はありますが、原因となっている体内のメカニズムが根本的に違います。
自律神経失調症の原因
自律神経失調症の原因は、前述したように交感神経と副交感神経という自律神経のバランスが崩れることにあります。自律神経のバランスが崩れる原因には、精神的ストレス、生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの乱れなどが挙げられます。
うつ病の原因
うつ病の原因は、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった脳内の神経伝達物質が減少することにあると言われており、神経伝達物質が減少する原因の一つとして、精神的なストレスや過労などが挙げられています。
自律神経失調症とうつ病、「検査・診断基準」の違い
原因が異なることに加えて、自律神経失調症とうつ病とでは検査や診断基準の有無に違いがあります。いずれの場合であっても、自己診断することはできず医師の診察が不可欠ですが、それぞれどのように診断がなされるのかについて説明します。
自律神経失調症の診断基準
自律神経失調症は、自律神経のバランスが崩れることによって心身に様々な不調が現れた状態を指します。つまり、医学的に認められている正式な疾患名ではないのです。そのため、自律神経失調症を診断するための検査や、明確な診断基準はありません。
検査や診断基準がない中でどのように診断されるかというと、前述した症状を説明できる身体疾患や顕著な精神疾患が認められない場合に診断されます。
うつ病の診断基準
うつ病は、医学的に認められている精神疾患です。そのため、うつ病を診断するための検査や明確な診断基準が存在します。
その診断基準は、WHO(世界保健機関)によるICD-10(国際疾病分類第10版)やアメリカ精神医学会によるDSM5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)に明記されています。両者をまとめると、抑うつ気分、興味関心の欠如、不安・焦燥、精神運動の制止あるいは高ぶり、食欲低下または体重減少、不眠などが生じ、社会的・職業的に機能の障害を引き起こしていることなどが診断基準となっています。
これらの診断基準に基づく診断は、自己診断によって行うことができるものではなく、精神科医が診察や心理検査などを行う中で確認し診断されるものです。
自律神経失調症とうつ病、「治療方法」の違い
自律神経失調症とうつ病とでは様々な違いがあることはわかってきたかと思います。治療方法には共通している部分があります。
自律神経失調症の治療方法
自律神経のバランスが崩れている原因によって異なりますが、基本的には生活習慣の改善、心身の症状を改善するための薬物療法、カウンセリングが治療法とされています。
生活習慣の改善としては、十分や睡眠と休息をとり、バランスの取れた食事をとり、過度な飲酒やカフェインの摂取を控えるなどが挙げられます。薬物療法では、自律神経調整薬が用いられる場合や症状によっては抗不安薬や抗うつ薬が用いられる場合があります。カウンセリングでは、ストレスとの付き合い方や自己理解を深めることなどを目的に行われます。
症状やその原因によって、これらの治療方法が単体で用いられることもあれば組み合わせて用いられることもあります。
うつ病の治療方法
うつ病の治療方法としては、まずは心と身体をしっかりと休める療養が基本です。その上で抗うつ薬による薬物療法や、リワーク施設などでも行われている認知行動療法が効果的です。
抗うつ薬は神経伝達物質の分泌を増やすことで、うつ病の様々な症状を軽減してくれます。認知行動療法とは、考え方や受けとめ方(これを認知と呼びます)や行動に働きかけることにより、気持ちを楽にしたり、行動を変える方法をみつけていく治療方法で、うつ病の症状にも有効と言われています。
療養を基本として、主治医と相談しながら薬物療法や認知行動療法を組み合わせて治療が行われます。
自律神経失調症とうつ病、「予防方法」の違い
予防方法については、基本的には大きな違いはありません。自律神経失調症とうつ病に共通した予防方法について説明します。
1.食生活を整える
炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどバランス良く栄養を摂るようにしましょう。毎日好きなものを食べているとついつい栄養バランスは偏ってしまいがちです。意識的にバランスの良い食事を摂るようにしましょう。
2.十分な睡眠を取る
十分な睡眠時間を確保するとともに、良い質の睡眠を取ることも予防になります。平日は睡眠不足になりがちで週末にまとめて長い時間の睡眠を取る人もいるかもしれませんが、平日も睡眠不足にならないように過ごすようにしましょう。基本的には同じ時間に寝て同じ時間に起きることが身体に優しい良いリズムとなります。
3.適度な運動をする
激しい運動をする必要はありません。なるべく日が出ているとき(夏は涼しい朝方や夕方をお勧めします)に外に出て散歩をしたりランニングをしたりする習慣をつけましょう。
4.ストレスを溜め込まない
ストレスを溜め込まないことも予防として大切です。ストレスを感じていることに気づいたら、早い段階でストレス発散やストレスの元となっている問題を解決したりして溜め込まないようにしましょう。自分なりのストレス発散方法や問題を解決する方法を多くもちましょう。
※リヴァトレでのストレス対処プログラムは以下から詳しくご確認いただけます。
自律神経失調症かもしれないと思ったら、何科の病院を受診すればいい?
「自律神経失調症かもしれない」と思った場合には様々な症状が出ていると思います。身体症状が強いようであれば、まずは内科を受診してみましょう。それによって内科的な原因がないにも関わらず症状があるようであれば、精神科や心療内科の受診を検討すると良いでしょう。
また、身体症状ではなく精神症状が強いようであれば、まずは精神科を受診してみましょう。精神疾患が認められないにも関わらず症状が継続している場合には、身体疾患があることによって精神症状が生じている可能性もあるため、内科の受診を検討してみると良いでしょう。
さいごに
自律神経失調症とうつ病はどちらもストレスと生活習慣が関わっていることは共通しています。調子が悪いと感じたら、まずは生活習慣を整え、ストレスをためないようにすることから始めてみましょう。しかし、いずれの場合も自己診断できるものではありません。一人では対処できないほど辛い心身の症状が生じる前に、医師へ相談することをお勧めします。
さいごに実際の体験談記事のご案内ですが、自律神経失調症と診断され抗うつ薬を服薬していた女性(その後にうつ病を患うも、社会復帰を果たします)の記事を良ければご参考までにご覧ください。
【うつ体験談】「うつ」は私にとって“転機”でした。-40代 女性(前編)
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産業医科大学 医学部医学科卒業。新日鐵住金(株)専属産業医、(株)三越伊勢丹ホールディングス統括産業医を経て現職。日本産業衛生学会 産業衛生専門医、産業医科大学 非常勤助教。現在、複数の日系企業や外資系企業の産業医、コンサルティングを行っている。