うつ病の薬の服用をやめる前に知っておくべき5つのこと

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うつ病の薬の服用をやめる前に知っておくべき5つのこと

うつ病の治療を開始すると、多くの方が薬を処方されると思います。しかし処方はされているものの、精神科の薬はあまり長く飲みたくないなと思うことや、症状が良くなったから飲むのをやめようかなと思うことがあるのではないでしょうか。

この記事では、「うつ病の薬をやめようかな」と思った方が、やめる前に知っておくべきことについてお伝えしたいと思います。

前提:
抗うつ薬(うつ病の薬)だけでは完治が難しい場合もある

「うつ病の治療といえば、抗うつ薬!」と思っている方が多いかと思います。しかし、これは抗うつ薬を服用すればうつ病が必ず治るということではありません。ここでは本記事の主題(薬をやめる前に知っておくべき5つのこと)に入る前に、薬の服用をやめることを検討している方が改めて抑えておくべき抗うつ薬の基本的な情報を整理したいと思います。

やめる・やめないに限らず、全体的な抗うつ薬の基礎知識について知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

(参考:種類、効果、副作用、止める際のポイント…産業医が教える「抗うつ薬」の基礎知識

1.抗うつ薬の効果は人によって様々

うつ病のメカニズムは実はまだ明らかにはなっていません。それにも関わらずうつ病には抗うつ薬が効果的だと言われているのはなぜなのか、ご存知でしょうか。それは、うつ病に関する多くの研究が行われる中で、うつ病が神経伝達物質の減少によって生じるという仮説があるからです。この仮説に基づいて作られたものが抗うつ薬で、抗うつ薬を服薬することによって、減少している神経伝達物質を増やしているわけです。しかしながら、うつ病が起きるメカニズムは複雑であり、抗うつ薬の研究仮説は他にも様々なものがあります。そういった点で、こちらの仮説だけでは説明できないこともある事から、抗うつ薬の効き目においては個人差がある事も知っておくと良いかもしれません。

2.自分に合った抗うつ薬を見つけることが難しい

抗うつ薬には、セロトニン(別名「幸せホルモン」などとも呼ばれる神経伝達物質)の量を調整するもの(分類:SSRI)もあれば、セロトニンとノルアドレナリン(アドレナリンの原型とされる神経伝達物質)の両方を調整するもの(分類:SNRI)もありますし、他の神経伝達物質に作用するものもあります(分類:三環系、四環系)。更に、それらの中に複数の種類の薬があるのです。その中で自分に合っていて効果を感じられる薬やその組み合わせを見つけることが難しい場合もあります。

3.抗うつ薬の服用をやめることが難しい場合もある

抗うつ薬は、長く飲み続ける必要があり、服薬をやめるためには段階を踏まなければならない薬です。長く抗うつ薬を服用していると精神的に抗うつ薬に依存してしまう場合もあります。「抗うつ薬の服用をやめると、また気分が落ち込んでしまうのではないか」と思うとなかな減薬に踏み切れなくなってしまうのです。

また、抗うつ薬を止める際には、離脱症状(めまい、吐き気、ふらつき、頭痛、下痢、震えなど)が出る可能性があります。それらの離脱症状は、医師に相談しつつ徐々に減薬していくことでその危険性を最小限に抑えられます。

4.抗うつ薬には副作用が出る場合もある

抗うつ薬は脳の神経伝達物質に働きかけてうつ症状を改善してくれる可能性があるものですが、一方で副作用が出る場合もあります。特に副作用が出るタイミングとしては薬を飲み始めたときと、薬の量を増やしたときです。具体的な症状としては、不安やイライラといった精神症状、手足が勝手に動いたり震えたりする錐体外路症状、発汗や下痢などの自律神経症状があります。手足が震えるから薬を止めたい…ではなく、そもそもそういった副作用があることを知っておきましょう。

勝手にやめないで!
うつ病の薬をやめる前に知っておくべき5つのこと

病院で抗うつ薬を処方してもらったものの全然効果が感じられない時や、処方される薬の量が増えた時、服薬によって症状が改善した時など、「服薬をやめるのもありかな」と思うタイミングがあるのではないでしょうか。しかし、自己判断で服薬をやめる前に知っておいた方が良いことがいくつかあります。

1.抗うつ薬の効果は早くても2週間後から

抗うつ薬は飲むとすぐに効果が感じられるような、即効性のある薬ではありません。一般的には、抗うつ薬の効果が出始めるまでに2週間〜4週間かかると言われています。抗うつ薬を処方されて、主治医から「2週間後にまた来て下さい」と言われることがあるのはそのためです。抗うつ薬の効き方がゆっくりとしたものであることを知っているか否かで、抗うつ薬を服用し始めてから効果が出るまでの間の心の持ちようが違ってくるはず。まずは正しい理解をしておきましょう。

2.抗うつ薬は少量から始まり増量していく

もともと精神科への受診や薬の服用に抵抗があった方の場合、薬が増えたことで薬漬けになるのではないかと不安になるかもしれません。しかし抗うつ薬の処方は、少量から始まり、効果や副作用について確認しながら少しずつ量を増やしていく前提で処方され始めます。そういったことを知っておくと、薬が増えてもびっくりせずに服薬を続けられるのではないでしょうか。

3.副作用は時間が経つと軽くなりやすい

抗うつ薬を服薬し始めると、吐き気や嘔吐、不安やイライラといった副作用が出ることがあります。副作用が強く出ると、服薬をやめたくなってしまうと思います。しかし、その副作用は一時的なもので、薬に慣れてくればおさまっていくものです。少し辛い時期があるかもしれませんが、飲み続ける限りずっと続くものでは決してないことを覚えておきましょう。

4.自分の体に合う抗うつ薬と、合わない抗うつ薬がある

前項でも触れましたが、抗うつ薬にはいくつもの種類があります。どの薬が合うかは、服薬してみなければわかりません。初めて処方された抗うつ薬が合わないと感じたら、服薬を中断するのではなく、主治医に症状や副作用について相談することで薬の変更を検討することができます。

5.うつの症状が安定した直後の状態は、あくまで服薬効果

服薬を継続して2週間〜4週間ほど経つと、うつ症状が軽減してくる場合があります。しかしその状態は、薬の力で神経伝達物質の調整を図ることによって保たれているものです。このタイミングで服薬をやめてしまうと、もとのうつ症状が再発する可能性があります。

(参考:うつ病の再発率が60%って本当!?再発予防に欠かせない3つの対策とは

うつ病の薬の服用をやめる前に知っておくべき5つのこと

うつ病の薬をやめる前に確認・検討すべき具体的な項目5つ

「いくら薬を飲んでも良くならない。もういっそのこと飲むのをやめてしまおう」と思ったときや、逆に「症状が良くなったから薬をやめてしまおう」と思ったときは、自己判断で勝手に中断せずに一度立ち止まって他に見落としていることがないかなどを考えてみましょう。ここでは具体的にどのようなことを振り返ったり、確認した方が良いかを【症状が改善しない場合】と【症状が改善した場合】に分けてご紹介します。

服薬していても症状が改善しない場合

1.十分な休養を取れているか

うつ病の治療で重要なことは、十分な休養を取ることです。服薬をしていても十分な休養が取れていないことで、服薬の効果が出ていない可能性があります。心と体がしっかり休めているか、今一度ご自身に問いかけてみてください。

(参考:うつに悩む人こそ知っておきたい!睡眠コンサルタントが教える「早寝早起き」成功の秘訣

2.環境調整ができているか

周囲のサポートが得られず環境調整がなされないことにより、服薬の効果が出ていない可能性もあります。ストレスフルな環境が続いていないか、相談に乗ってくれる人やサポートしてくれる人が周囲にいるか、そういったご自身が置かれている環境についても振り返ってみてください。

3.薬の飲み忘れがないか

処方された通りに服薬できているでしょうか。ただ処方された薬を飲み切ればよいという話ではなく、処方された通りに適切に服薬していることが大切です。適切に服薬できていないと、もちろん効果は出にくくなってしまいます。

うつの症状が改善した場合

4.うつ病の治療の流れを理解しているか

休養や環境調整、服薬がうまくできることによって、うつ病の症状は改善してくることが多いと思います。少しずつ家事や外出ができるようになり、やがて症状がほとんど出ない状態に近づきます。しかしこの時期は、うつ病が治ったわけではなく「良い状態の維持期間」に過ぎません。この期間に症状が再発しないように服薬を継続することが、症状が悪化しないために非常に重要です。今ご自身が治療の流れのどの段階にいるのか、振り返ってみてください。

(参考:うつ発症から復職まで「3つのフェーズと過ごし方のポイント」

5.予防方法を身につけているか

うつ病の治療には、服薬以外にも認知行動療法の効果が認められています。うつ病になると否定的な思考に陥りやすくなりますが、その思考にアプローチすることで否定的気分の予防や改善を図る治療法になります。服薬をやめる前に、薬以外の予防方法を身につけておくと良いでしょう。

(参考:【リワークプログラム】物事の捉え方をバランスよくする『集団認知行動療法(CBGT)』
(参考:「うつ病で外出がつらい…。」そんな時の対処法は? - 行動活性化療法のご紹介

薬をやめる前に、まずは主治医に相談を

薬をやめるとき・やめたいと思ったときは、自己判断で中断せずに主治医に相談しましょう。まだ服薬の必要性が高い時期であると言われれば、主治医にその理由を聞き、納得して服薬を継続しましょう。今後の治療の流れや方針についても改めて主治医にたずねてみると、ご自身も見通しをもって治療を継続することができるのではないでしょうか。主治医にどのようにして話せばいいかなど悩まれる場合には、疑問に思っていることを書き出して整理したり、書き出したものを主治医や心理士などに渡すなど伝える方法を工夫してみると良いと思います。

他の意見も聞いてみたい…そんな時はセカンドオピニオンを。

「主治医と話したけど、疑問が残る」などと思ったときには、セカンドオピニオンをおすすめします。セカンドオピニオンとは「患者にとって最善と思える治療を患者と主治医との間で判断するために別の医師の意見を聴くこと」ですので、現在の治療法や服薬の継続に関して疑問が残っている部分があれば別の医師に尋ねてみると納得できることもあるかと思います。少し利用しづらさを感じるかもしれませんが、近年では”セカンドオピニオン外来”という、セカンドオピニオンを専門に扱う病院もあります。一度調べてみてはいかがでしょうか。(セカンドオピニオンは、重複診療を防ぐために保険外診療となっています。その点にご注意の上、利用の検討をしてみてください。

主治医に相談しづらい…そんな時はご家族などの同伴も検討を。

「相談すべきなのはわかっているけれど、何だか相談がしづらい・うまく話せる自信がない」という方には、ご家族などに同伴して頂くことをおすすめします。うつ病の治療において、主治医に適切に症状を伝えたり相談したりできるということは症状改善に関わる非常に大切な要素です。しかし、ご本人だけでは伝えきれないことも多々あるかと思います。

弊社リヴァトレでは正式利用の方には通院同行も行っています。基本的にはリヴァトレでの取り組み内容を主治医とすり合わせて、治療方針との齟齬がないかを確認するために同行しますが、場合によっては、ご本人だけでは伝えきれない部分のお伝えをサポートすることもできます。薬を含めた治療方針を決めるのは主治医になりますが、ご本人の生活の様子や心配事・困りごとをお伝えすることにより、ご本人が安心して医療を受けることを助ける一助になるのではと考えています。

主治医に相談がしづらいのであれば、ご家族などの通院同行もぜひ検討してみてください。

(参考:「診察の時に上手く話せない…」心療内科・精神科で診察を受ける時に医者に話しておきたい5つのポイント
(参考:自己判断は要注意!?うつ病の人が「仕事を休む/辞める」を考え始めた時こそ主治医に相談すべき2つの理由とは?
(参考:うつになった時の病院選び 5つのポイント

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西本真証様
この記事の監修
西本 真証 センクサス産業医事務所 パートナー医師

産業医科大学 医学部医学科卒業。新日鐵住金(株)専属産業医、(株)三越伊勢丹ホールディングス統括産業医を経て現職。日本産業衛生学会 産業衛生専門医、産業医科大学 非常勤助教。現在、複数の日系企業や外資系企業の産業医、コンサルティングを行っている。

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