適応障害を克服したと思っても、職場や環境が変わるたびに再び同じような症状が現れて、不安を感じることはありませんか?「繰り返し発症してしまうのでは?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。
適応障害は、ストレスや環境に適応できないことが原因で発症しますが、再発を防ぐためには、環境や自分のストレス対処法を見直すことが重要です。 本記事では、適応障害が再発してしまう原因と、それを繰り返さないための対処法についてご紹介します。
目次
適応障害とは
適応障害とは、何らかのストレスを原因(ある生活の変化や出来事)として、普段の生活が送れないほど抑うつ気分や不安、心配が強くなり、それが明確に正常の範囲を逸脱している(≒ストレスを感じる環境に適応できなくなった)状態のことをいいます。
適応障害によくみられる症状には、次の一覧のようなものが挙げられます。
<情緒的な症状>
不安、抑うつ、焦燥、過敏、混乱、緊張など
<身体症状>
不眠、食欲不振、動悸、全身倦怠感、疲れやすい、頭痛、肩こり、腹痛、吐き気、めまいなど
<問題行動>
遅刻、欠勤、早退、過剰飲酒、ギャンブル中毒など
抑うつ・不安感・不眠・食欲不振などの症状が現れる、日常生活に支障が出る点はうつ病と共通ですが、適応障害の場合は「症状の原因となったストレスが明らかで、そのストレスがあった日から3か月以内に発症する」「原因となるストレスがなくなれば、6か月以内に症状がおさまる」ことが特徴です。そのため、原因となるストレスを取り除くことや対処法を身につけることが大切になります。
自力での解決・解消が難しい場合や、症状が続くような場合は、一人で抱え込まずに精神科や心療内科等、専門の医療機関を受診しましょう。専門医に相談することで、適切な診断や治療を受けることができます。
適応障害で休職することになった場合の平均的な期間やおすすめの過ごし方など、こちらの記事でも詳細を解説しています。
繰り返す適応障害…その原因とは?
適応障害が再発する背景には、以下のような原因が挙げられます。
ストレス要因が改善されていない
適応障害の主な原因は環境や人間関係によるストレスです。再発するケースでは、過去のストレス原因が十分に解消されていない、または新たなストレスに直面していることが多いです。
適応障害は、環境が変わることで一時的に症状が改善することがありますが、再び同じ環境に戻ると、同じストレスに直面し、再発のリスクが高まります。特に職場や家庭など、問題のある人間関係や負担の大きな業務内容に変化がない場合、再び心身に負担がかかり再発させてしまう場合が多いでしょう。
再発を防ぐためには、ただストレスから離れるだけではなく、環境を調整することが大切です。たとえば、業務量を見直したり、信頼できる人にサポートを依頼したり、部署異動や働き方の変更を検討してみましょう。
ストレス対処法が身についていない
適応障害は、ストレス要因が取り除かれることで、症状が改善するケースが多いです。しかし、この改善が長期的なものになるかどうかは、再び同じようなストレス状況に直面したときにどう対処できるかにかかっています。
再発を防ぐにはストレス要因そのものだけでなく、それにどう向き合うかという「考え方」や「行動のパターン」を見直すことが重要です。たとえば、「認知行動療法」を通じてストレスへの捉え方を柔軟にし、具体的な対処法を練習することで、似た状況に再び直面した際のリスクを減らすことができます。
認知行動療法とは、ストレスの原因が出来事そのものではなく、その出来事に対する「考え方」や「捉え方」にあることを学ぶものです。
例えば、仕事で失敗した時に「仕事で失敗した自分は無能だ」とすぐに自己否定的に考えてしまう癖に対して、「一度の失敗で自分の価値は決まらない」「仕事が成功している時もある」など、現実と照らし合わせて考え方や捉え方の幅を広げていく練習を行います。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
体力や心身の回復が不十分
適応障害は症状が一時的に治まったとしても、心身が十分に回復していないと再発しやすいです。特に、休養期間が短かったり、無理に復職を急いだ場合には、再発リスクが高まります。
また体調が回復したからといって、自己判断で通院や服薬をやめてしまうことも避けましょう。「もう症状が改善したから大丈夫」と感じてしまい、医師に相談せず自己判断で治療をやめてしまうと再び症状が悪化したり、再発リスクが高まったりする可能性があります。
薬は飲み始めた後から効果が出るまで多少の時間がかかるとされています。すぐに薬の効き目が感じられず不安になっても、自己判断で服薬をやめたり減らしたりせず、まずは指示通りに服薬を続けてください。もし副作用が強い場合は、早めに主治医に相談しましょう。
また、治療を進めていくと、体調がよくなったり悪くなったりといった波が見られるようになります。一見症状が落ち着いてきたとしても、一時的な回復である可能性があるので、そのタイミングで治療を中断せずに、主治医と相談のうえで治療を継続しましょう。
適応障害を繰り返さないために。5つの対処法を解説
適応障害はストレスを原因とする心身の不調であるため、再発を防ぐために、ストレスと上手く付き合い、心身をすこやかに保つ取り組みが大切です。
ここでは、適応障害を繰り返さないための具体的な対処法を5つご紹介します。
① 一人で抱え込まず相談する
ストレスを感じたときは、一人で抱え込まずに誰かに相談しましょう。家族や友人だけでなく、会社の上司や人事部、産業医に相談するのも一つの手です。
特に産業医は職場の健康管理を専門としているため、職場環境の改善について的確なアドバイスを得られることがあります。相談することで孤立感が軽減され、サポートを受けるきっかけにもなります。
おすすめの相談先については、後ほど詳しくご紹介します。
② ストレスの原因を把握して、対処法を身に付ける
ストレスを軽減するためには、まずその原因を明確にし、放置せずに外在化することが重要です。
まずは「自分にとってどんなことがストレスになるのか」を紙に書き出した後「ストレスがかかった時、自分にどんな変化(リヴァトレでは注意サインと呼んでいます)が生じるのか」を把握するために、自分自身の身体の反応や心の違和感に目を向け、それも紙に書き出してみましょう。自分自身に起こる小さな変化を早めにキャッチすることで、調子が悪くなりすぎる前に対処行動に移ることが可能になります。
さらに、自分がリラックスできる行動や、気持ちを切り替えられる方法をリストアップしておくことで、調子が悪くなる前に早めに対処することができます。さまざまな対処法を試し、働きながらでも実践できる方法を探してみてください。
③ 環境の調整を行う
適応障害の多くはストレス原因を特定できるケースがほとんどですので、まずはストレス原因から離れるために環境を調整することが大事です。
ストレスの原因が職場環境にある場合は、できる限り環境を改善する働きかけをしてみましょう。例えば、業務量が多すぎる場合には上司に相談して業務を分担する、人間関係のストレスがある場合には部署異動を検討するなどです。
環境調整は決して「逃げ」ではなく、健康を守るために必要なプロセスです。ご自身の健康を最優先に考え、必要な調整を行いましょう。
④ 休職や退職・転職を検討する
適応障害はストレスの原因から離れられると早めの回復が期待できる病気です。どうしてもストレスの原因が改善できない場合、休職や転職を検討することも選択肢に入れておくと良いでしょう。
休職は一時的にストレスの原因から距離を置き、体調を整えるための有効な手段です。医師に相談したうえで、無理をしたまま仕事を続けるのは避け、休職してストレスの原因から離れることも検討してみてください。
休職を検討した方がいいサインの例
●家族や上司から「休んだ方が良い」と言われた
●単純なミスが増える
●眠れない/寝すぎてしまう等、睡眠に問題が生じている
●食欲がなくなる
●動悸がする/涙が出てくる
これらのサインに気付いたら、適応障害などのメンタル不調に陥っている可能性が考えられます。今の時点で医療機関に通院されていない方は早めに受診していただき、主治医と休職の選択肢も含めた相談ができると良いかと思います。
適応障害で休職する際の基本的な流れについてはこちらの記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
また、対象となるストレス原因が取り除けるものであったり、環境調整により回避できるものであればよいのですが、自分の希望だけでは動かせないものもあります。必要であれば、退職や転職も検討しましょう。
適応障害はストレスの原因から離れられると早めの回復が期待できる病気です。退職するのも勇気がいることだと思いますが、環境調整の手を尽くしたうえで、どうしても現在の仕事を継続することが困難な場合は、周囲の人や主治医ともよく相談し、影響を踏まえて退職や転職することが現実的に可能かどうか検討してみてください。
ただ、体調が悪い時は視野が狭まり、普段より否定的に考えてしまうので、体調が悪い時こそ、「仕事を休む・辞める」という大きな決断は自己判断しないようにしましょう。生活に関わるような大きな決断をする場合は、まずは主治医や家族に相談をしたうえで、複数の選択肢から検討するようにしてください。
休職・退職時には経済的な支援制度も活用しよう
休職や退職で収入が減ったり、給与が得られなくなったりといったお金に関する心配は、適応障害の悪化のリスクを高める可能性があります。
こちらの記事で休職・離職時に使える経済的な支援制度の概要を紹介していますので、ご自身が使える制度について十分に確認したうえで、納得できる次の一歩を踏み出していただければと思います。
⑤ 支援機関を活用する
頼る先として職場や家族だけでなく、専門的な支援機関を活用することもおすすめです。
精神保健福祉センターや医療ソーシャルワーカーなどでは、心の健康に関する相談や支援を受けることができます。
また、認知行動療法(CBT)を取り入れた「リワーク」などを利用すれば、ストレスへの対処法を学びながら復職や再就職の準備ができます。「リワーク」については後ほど詳しく解説します。
一人で抱え込まず、利用できるサービスを積極的に活用してください。
適応障害が再発したかも…そんなとき頼れる身近な相談先
主治医に相談する
適応障害と診断されてから治療を行い回復し、仕事に復帰した後でも、通院と仕事の両立を続けていただくことが大事です。通院や服薬を自己判断で中止するのは避けましょう。
再び心身の調子が悪くなってきたと感じたら、主治医へ相談してみてください。放置することで適応障害を繰り返してしまったり、回復までにより長い時間が必要になったりするリスクがあります。
勤め先や産業医に相談する
適応障害は環境を調整しストレス要因を取り除くことで回復する疾病です。自分の置かれている環境を身近で把握している上司に相談することで、職場環境や業務量の調整を行うなど、体調立て直しの対策を打てる可能性があります。
しかし直属の上司だからこそ、直接相談するハードルが高いこともあるでしょう。その場合、会社の人事部に直接相談するという方法もあります。人事部は適応障害やうつ病などメンタル不調者への対応や休職の手続きを担当する部署でもあるので、会社内の相談窓口として機能します。
また会社の産業医に相談することも重要です。産業医は医学の専門家として、社内の労働者の健康管理を担当しています。近年、産業医面談は対面のほかオンラインでも受けることができるようになりました。産業医面談を希望される場合は、社内での相談方法を上司や人事等の社内窓口に確認してみて下さい。
厚生労働省運営「こころの耳」
会社で悩みが相談しづらいという場合には、社外の相談窓口を活用することも方法の一つです。 厚生労働省が運営している「こころの耳」というWebサイトでは、電話での相談窓口のほか、SNSやメールを使った相談窓口も紹介しています。ほかにも、仕事や生活など悩みの種類ごとに相談できる窓口が掲載されていますので、「うつ病の初期症状かもしれない」「病院に行った方がいいか悩んでいる」という方も、一度相談してみるといいでしょう。
▶参考:こころの耳
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは精神保健福祉法にもとづき各都道府県・政令指定都市に設置されている支援機関であり、こころの病気について幅広く相談することができます。
こころの病気や困りごとについて相談できる機関としては、他にも保健所や市町村保健センターがあります。この中でも精神保健福祉センターは、専門性のあるスタッフ(医師や精神保健福祉士、臨床心理士など)が多く揃っているのが特徴です。
▶参考:全国精神保健福祉センター長会 全国精神保健福祉センター一覧
リワークでストレス対処を学び、適応障害の再発を防止しよう
繰り返す適応障害への対策として、「リワーク」でストレス対処法を身に付けることも効果的な手段の一つです。
リワークとは、「Re-Work(再び働く)」を意味しており、適応障害やうつ病などの精神面の不調からある程度まで回復したメンタルヘルス不調者を対象に、職場・社会復帰を目指すプログラムのことです。対人コミュニケーションやストレス対処法など、利用者の特性や体調に合わせた様々なプログラムが用意されています。
適応障害などのメンタルヘルス不調は、休息や服薬によって症状が回復したとしても、社会復帰後に再発を招きやすい病気です。
というのも、休職期間・療養期間が長引くと、体力・集中力・コミュニケーション力などがどうしても低下していくため、仕事復帰する際の負荷が大きく、ストレスを感じやすくなってしまうのです。再発後は休職期間が長期化したり、何度も休職と復職を繰り返すことも珍しくありません。
自宅療養と復職(あるいは再就職)の間に存在する大きなギャップを無くし、再発を防ぐためには、リハビリが必要です。スポーツ選手が怪我をした際にリハビリが不可欠なように、メンタル不調によって仕事を離れた方が段階的に社会復帰していくためのリハビリ機関にあたるのがリワークです。
リワークについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
ストレス対処法を身に付けて自分に合った働き方が見つかる「リヴァトレ」
リヴァトレとはメンタル不調の方向けの復職・再就職支援サービスです。
職場へ通勤するようにセンターへ通いながら、よりよい復職・再就職を目指してトレーニングを行います。グループワーク形式で行われる多彩なプログラムにより、心身のコンディションを整えていきます。
リヴァトレでは、適応障害などメンタル不調回復のヒントになるプログラムも数多く提供しています。ストレスを感じた際にどのように受け止め、どのように対処するかを練習することで、日常生活や職場でのストレスに対応できる方法を身につけられるでしょう。
ここでは、リヴァトレで実際にうけることのできるプログラムの一例をご紹介します。
認知行動療法で不安やストレスを軽減
リヴァトレでは、認知行動療法をグループで行う「集団認知行動療法(CBGT)」を導入しています。
グループで行うことで自分にはない視点の意見に触れることができ、様々な捉え方を知ることができます。どんな場面でも自分の反応を“絶対のもの”と考えなくてよくなり、捉え方の選択肢が広がることが集団認知行動療法(CBGT)のメリットです。
また他の参加者の事例について考えたり、意見を述べたりしているうちに、自分のことについても新しい捉え方ができるようになる方もいます。
アサーションでストレスの少ないコミュニケーションを学ぶ
リヴァトレでは、「アサーション」と呼ばれる、自分も相手も尊重するコミュニケーションスキルを学ぶことができます。
人間関係のストレスは、コミュニケーションがうまくいかないときに生じることもありますが、アサーションを学ぶことで、相手に配慮しながら、自分の気持ちを適切に伝える練習になり、衝突や誤解を減らせるようになります。
プログラム内では、ロールプレイを用いてリアルな場面を想定しながら、アサーティブな自他尊重の表現方法を身につけます。「自分の言いたいことを伝えつつも、相手を尊重する」というスキルは、復職後の職場や家庭でも活用できるでしょう。
自分に合った働き方を見つけてストレス軽減
リヴァトレは一人一人に合わせた復帰プランとプログラムで、「自分らしい働き方」を見つめ直すことができるのも大きな特長です。
適応障害を繰り返してしまう原因は、自分に合っていない環境で働き続けることによるストレスが挙げられます。再発を防止するためには、自分に合った働き方を考えることが大切です。
復帰に向けて準備をしている期間は生き方を見直すチャンスと捉え、自分らしい働き方を一緒に探していきましょう。
プログラムだけでないリヴァトレのメリット
リヴァトレでは、職場へ通勤するのと同じように、センターへ通いながら復帰に向けたトレーニングを行います。規則正しい生活が身に付けられるため、生活リズムの改善にも役立ちます。
また疾病理解やビジネススキル向上など、利用者の特性や体調に合わせた様々なプログラムが用意されています。
同じ悩みを持つ仲間と共感し合い、時には試行錯誤をしながら支え合うことで、自宅療養だけでは得られない孤独や不安の解消にも繋がるでしょう。
リヴァトレ利用者の声
自分の良い状態をキープするための対処、悪い状態になったときに良い状態に戻すための対処を自分なりにできる様になった。(50代、適応障害)
つらくなりそうな時は予兆の段階で休んだり妻に相談できるようになった。厳格な減点方式で自分を評価していたが加点方式で自分を評価できるようになった。つらくなりそうな予兆の特徴がわかるようになった。(40代、適応障害)
おわりに
適応障害を繰り返さないためには、まずは自分にあったストレス対処法を身に付けていただくことが大切です。環境が変わったとしても、もし同じような負担がかかるようなら、仕事や人間関係を調整したり、無理せずにサポートを求めましょう。
また、休養や復職のタイミングも、自分の体調をよく見て焦らずに決めることが重要です。リワークのようなプログラムを活用して、少しずつ自分に合った働き方を見つけていくことで、再発を防ぐことができます。
自分に合った働き方や生活リズムを見つけ、ストレスに強くなるためのスキルを身につけることが、適応障害を繰り返さないための第一歩です。無理せず取り組んでいきましょう。
まずは無料パンフレットをご覧ください
リヴァトレは、うつなどのメンタル不調でお悩みの方の復職・再就職をサポートするリワークサービスです。
復帰に向けて行う取り組みについて、無料パンフレットでわかりやすくご紹介しています。
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