仕事や日常生活のストレスが原因で、うつ病や適応障害などのメンタル不調になり、ストレスと向き合う方法を探している方もいるのではないでしょうか。そうした方の中には、認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy:CBT)が効果的だと聞いた人もいるかと思います。
本記事では認知行動療法に関心がある方に向けて、「認知行動療法とはどのようなものか」、「どんな施設で受けられるのか」についてわかりやすく解説します。
認知行動療法で考え方や行動を少しずつ見直すことで、うつ病や適応障害などメンタル不調の再発予防につながることがあります。「このまま社会復帰してもまた同じことを繰り返してしまうのでは…」と不安を抱えている方は、ぜひご覧ください。
目次
「認知行動療法」とは?
認知行動療法とは、抑うつや不安、イライラといった気分の原因を考える際、出来事そのものではなく、その捉え方に着目する治療法です。
「出来事そのものが気分に影響している」のではなく、「出来事をどのように受け止めたか(認知)」、「どのように振る舞ったか(行動)」が、私たちの気分や身体に影響するというふうに考えます。簡単に言うと、「物事の捉え方の幅を広げるトレーニング」です。
私たちは、同じ出来事でも「どう受け止めるか」で気持ちや行動が変わりますよね。現実の受け止め方を見直すことでバランスのとれた認知や行動ができるようにし、日常生活のさまざまな問題解決を図り、気分の改善を図るのが認知行動療法です。
医療機関で医師や看護師が実施した場合は保険適用となり、患者さんの経済的負担も少ない心理療法であるため、現在ではさまざまな精神疾患の治療現場で取り入れられています。
認知行動療法の基本的な考え方
上記画像を「真夏の猛暑でのどがカラカラ。冷蔵庫の冷えたお茶をすべてコップに入れてみた」ときのお茶だと思ってみてください。皆さんの頭の中にはどのような考えが浮かぶでしょうか?
「コップ一杯分あってよかった!」と喜ぶ方もいれば、「これだけしかないのか…」と落胆する方もいると思います。すぐに追加で買いに行ける場合なら「とりあえずこの量で良かった」と思うでしょうし、外出が自由に出来ない状況だったとしたら「これだけしかないのか」と捉えるでしょう。
このように認知行動療法では、まず現実を丁寧に見つめなおし、その結果、現在の捉え方が現実に即したものになっているかを考えます。見落としている事実があれば、それを拾いなおします。なお、認知行動療法は、あくまでも捉え方の幅を広げるものであって、ネガティブな考えを無理やりポジティブな捉え方に修正するものではありません。
その上で、最初の自分の考えや行動に偏りがあるようであれば、改めてどのように考えたり行動したりするといいかを検討する。そんな「捉えなおしの方法」が認知行動療法です。
認知行動療法の効果とは?
認知行動療法の効果はさまざまな研究により実証されています。ここでは、大きく2つの効果についてご紹介します。
①ストレス対処法が身につく
日々の生活の中で、私たちは無意識のうちに「考え方のクセ」を持っていることがあります。たとえば、1回だけの失敗を取り上げて、「自分は全くダメな人間だ」と考えてしまう場合、それがストレスや落ち込みの原因となることがあります。
認知行動療法では、こうした考え方のクセに気づき、現実と比較して「本当にそうだろうか?」と冷静に見直す習慣を身につけていきます。例えば「今回は失敗したが、同じ仕事を先週はできていた」といった振り返りを行うなどです。そうすることで、捉え方の幅が広がり、ストレスに対する耐性が高まるため、感情を安定させやすくなる効果が期待できます。
例
- 仕事でミスをしたときに「すべて自分のせいだ」と考えてしまう→「誰にでもミスはある。次に活かせばいい」と考え直す
- 上司の表情が気になって「怒られているかも」と不安になる→「本当に怒っているのか、確かめる方法は?」と冷静に分析する
②うつ病・適応障害などメンタル不調の再発防止
上記のようにストレスの対処法を身につけることで、うつ病や適応障害などメンタル不調の再発予防にもつながることがわかっています。
メンタル不調は、一度回復しても再発するリスクが高いことが特徴です。特に、うつ病は約60%の方が再発してしまうという厚生労働省の報告もあります。そのため、再発の予防をすることがとても重要になるのです。
再発のきっかけとして、ストレスの多い環境に戻ったとき、過去と同じ思考パターンに陥ることで症状がぶり返す場合があります。認知行動療法では、そのようにストレスがかかる場面を想定し、「どのように対応すればよいか?」を具体的に練習するため、社会復帰後の再発予防として効果的です。
認知行動療法が効果的な疾病
近年、幅広い精神疾患の症状の改善に効果があることが実証されており、特に下記の症状の改善につながることがわかっています。
- うつ病
- 双極症(双極性障害)
- 適応障害
- パニック障害
- 強迫性障害、社会障害などの不安障害
また精神疾患に限らず、日常のストレス対処や夫婦間の問題においても使用されるなど、幅広い分野で効果が認められています。
認知行動療法について、こちらのページでも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
認知行動療法はどこで受けられる?
認知行動療法はさまざまな場所で受けることができます。
全国の医療機関
厚生労働省が発表している以下の一覧から、認知行動療法が受けられる全国の医療機関を探すことができます。
※クリックすると、一覧が表示された厚生労働省作成のPDFデータが開きます。
ただし、この情報は令和4年3月時点のものですので、受診する前に、クリニックや病院のHPをあらかじめ確認しましょう。
日本臨床心理士会が運営しているサイトから探す
医療機関でなくとも、心理に関する専門資格(臨床心理士や公認心理師)を持った方々が運営しているカウンセリングルームや専門機関でも、認知行動療法を受けることができます。
日本臨床心理士会が運営しているHP「臨床心理士に出会うには」にアクセスし、「認知行動療法」の項目にチェックを入れて検索すると、該当施設を見つけることができます。 その他にも、都道府県やカウンセラーの性別など、自分に合った条件を設定して検索することが可能です。
オンラインで学ぶ
近年、認知行動療法をオンラインで学ぶことができるサービスも増えてきました。これらのサービスでは、パソコンやスマートフォンを使ってカウンセリングを受けることができるため、忙しい方や近くに専門施設がない方、自宅から気軽に始めたい方にとても便利です。
オンラインサービスを利用することで、自宅にいながら認知行動療法を学んだり、専門家のサポートを受けたりすることができます。ご自身の目的や状況に合わせて、適切な学習環境を選択してください。
一例として、インターネット上で認知行動療法について知ることができる厚生労働省のコンテンツをご紹介します。
こころの耳:eラーニング「15分でわかる認知行動変容アプローチ」
厚生労働省の「こころの耳」ポータルサイトでは、認知行動療法の基本的な考え方や対応のコツを短時間で学べるeラーニングコンテンツを提供しています。認知行動療法の基礎をオンラインで手軽に学ぶことができます。
うつ病の認知療法・認知行動療法マニュアル
厚生労働省が作成した認知行動療法マニュアルです。この資料では、うつ病の理解から認知行動療法の具体的な手法まで、詳しく解説されています。オンラインで閲覧・ダウンロードが可能です。
書籍で学ぶ
認知行動療法は、専門家のサポートを受けながら進める方法だけでなく、自分で実践できる書籍や教材も多くあります。日常生活の中で取り組むことで、自分自身の考え方や行動を見直すきっかけになるため、手軽に始められる方法として人気があります。
リヴァでは認知行動療法の考え方を取り入れた『メンタル不調者のための 脱うつ 書くだけ30日ワーク』をご用意しています。
このワークブックは、忙しい日々の中でも取り組みやすいよう、1日ごとに短時間でできるステップを組み合わせています。30日間のプログラムを通じて、考え方のクセに気づき、それをより柔軟で前向きなものに変えていくお手伝いをします。
「ストレスを軽減したい」「自分の考え方を整理したい」と感じている方にとって、手軽に始められる第一歩としてよければ活用してみてください。
社会復帰をサポートするための施設(リワーク・就労移行支援)
認知行動療法を取り入れたサポートを受けられる場所として、リワークなどの社会復帰支援サービスを利用する選択肢もあります。
リワークとは、うつ病や適応障害などメンタル不調で休職・離職された方が社会復帰を目指すための施設です。ストレス対処を身につけるためのトレーニングとして、認知行動療法を取り入れているリワークは少なくありません。
メンタル不調で休職・離職されている場合、リワークを活用することで、ストレス対処だけでなく生活リズムの改善や疾病理解など、さまざまなメリットを得ながら社会復帰の準備を行うことができます。
グループで行う集団認知行動療法
リワークサービスによっては、認知行動療法をグループで行う「集団認知行動療法(CBGT)」を取り入れているところもあります。リヴァの提供するリワークサービス「リヴァトレ」もそのひとつです。
集団認知行動療法のメリットは、グループで行うことで自分にはない「他者の視点」からの意見に触れられることにあります。
はじめ「自分が悪い」と責めていた方も、複数の人が「こんな言い方をされるなんて相手にも問題があるのでは?」「私だったらこう考える」といった意見を出し合うことで、「自分が負う必要のない責任まで感じていたかもしれない」と、新たな視点を得られるかもしれません。
そうやって自分とは違う捉え方があることを知っておくと、どんな場面でも自分の反応を「絶対のもの」と考えなくてよくなり、捉え方の選択肢が広がります。
また、専門家ではなく同じ立場の仲間だからこそ、「一緒に頑張っている仲間が言うのなら信じてみよう」と思えることもメリットの一つです。
集団認知行動療法についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
集団認知行動療法を受けられるリワーク「リヴァトレ」
リヴァの提供する復職・再就職支援サービス「リヴァトレ」では、集団認知行動療法プログラムを受講できます。
それ以外にも、再発防止や生活リズム改善、ビジネススキル向上など、さまざまなプログラムでメンタル不調の方の社会復帰をサポートしています。一人一人に合わせた復帰プランとプログラムで、「自分らしい働き方」を見つめ直すことができるのも大きな特長です。
同じ悩みを持つ仲間と共感し合い、時には試行錯誤をしながら支え合うことで、自宅療養だけでは得られない孤独や不安の解消にも繋がります。
集団だからこそ得られる仲間の支えとともに、一歩ずつ前に進みたいと考えている方は、ぜひ検討してみてください。
おわりに
認知行動療法(CBT)は、考え方や行動のパターンを見直し、ストレスに対処する力を育てる心理療法です。うつ病、適応障害などメンタル不調の再発予防や職場での適応力向上のため、医療機関やカウンセリング、リワーク施設など、さまざまな場所で受けることができます。
焦らず、ご自身に合った方法で取り組んでみてください。
まずは無料パンフレットをご覧ください
リヴァトレは、うつなどのメンタル不調でお悩みの方の復職・再就職をサポートするリワークサービスです。
復帰に向けて行う取り組みについて、無料パンフレットでわかりやすくご紹介しています。
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世田谷区の教育相談員→民間企業の治験コーディネーターを経て、2021年に株式会社リヴァに入社。森田療法を基にした相談支援を行っている。趣味はコーヒーのハンドドリップ。