『適応障害』と『うつ病』の違いをご存知でしょうか。実はうつ病だと思っていた病気の多くは、うつ病ではなく適応障害だったりします。この二つを混同して対応をされているケースもあるため、正しい理解が必要です。
今回は適応障害とうつ病の違いをお伝えした上で、適応障害についてまとめてみました。
目次
うつ病と適応障害の違いって結局何なの?
まずは、うつ病と適応障害の違いを結論から見ていきます。
うつ病と適応障害の位置づけ
心療内科・精神科の専門用語の一つに『うつ状態』というものがあります。以下の図で示すように、『うつ状態=うつ病』ではありません。『うつ病』『適応障害』はどちらもが”うつ状態”に当てはまり、割合で言えばむしろ適応障害の方が多いと思われます。
うつ病と適応障害の違い
うつ病と適応障害の違いを簡単にまとめてみました。
このように、うつ病と適応障害では、発症原因の有無や、うつ状態の現れ方などで区分けされています。原因や症状が違うということは、対処法などにも違いが出てきますので正しい理解が必要です。
また、適応障害は別名「プレうつ」と言われたりしますが、治療せずに放っておくと、特定のストレスが原因となり、”うつ病”へ移行・併発することがあるため、早期発見と解決が大切です。(参照:厚生労働省 みんなのメンタルヘルス)
補足:「新型うつ病」と「うつ病」の違い
ここで更に皆さんをさらに混乱させる言葉に「新型うつ病」というものがあります。うつ病と何が違うの?と、疑問に思う方が多いかと思いますが、新型うつ病というのは、そもそも精神医学的な信頼性と妥当性を有した疾患概念ではありません。
聖隷浜松病院精神科の生田孝先生の論文では、【①比較的若年層の人に多い/②従来の(内因性)うつ病に比して几帳面な職業人が少ない/③訴えに自己中心的な印象がある/④罪業感が薄く、責任回避行動が主体/⑤自罰・自責的よりも他罰・他責的/⑥抑うつ感とならんで自己不全感と心的倦怠が優位/⑦パーソナリティ発達上に未熟さを認める】といった特徴があると紹介されています。(参照:臨床現場における「新型うつ病」について)
それでは、適応障害について少し踏み込んで説明していきます。
適応障害とは?定義や診断基準について
まずは適応障害の定義・診断基準を見ていきましょう。
DSM-5(米国精神医学会による適応障害診断基準)[※]によれば、上記のA~Eの全てを満たす状態を適応障害の診断基準とされています。また、ICD-10(世界保健機構が定めた適応障害診断基準)[※]によると「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」と定義されています。
つまり適応障害とは、ストレスの原因(ある生活の変化や出来事)がその人にとって非常に重要で、普段の生活がおくれないほど抑うつ気分、不安や心配が強くなり、それが明らかに正常の範囲を逸脱している(≒その環境に適応できなくなった)状態といえます。
※DSM-5/ICD-10について
「適応障害」の臨床診断には、米国精神医学会が定めたDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 「精神障害の診断と統計マニュアル」)や世界保健機構が定めたICD-10が国際的に利用されています。日本の医療機関では、双方の診断基準をそれぞれを使い分けて診断にあたっています。
適応障害の特徴や症状を知っておこう
適応障害の特徴や症状には次のようなものが挙げられます。
- 情緒的な症状
不安、抑うつ、焦燥、過敏、混乱など - 身体症状
不眠、食欲不振、動悸、全身倦怠感、易疲労感、頭痛、肩こり、腹痛など - 問題行動
遅刻、欠勤、早退、過剰飲酒、ギャンブル中毒など - 対人関係や社会的機能が不良となり、仕事に支障をきたしたり、 引きこもり状態になるなど
このように、適応障害の症状はうつ病と共通しているところが多いです。前項でもお伝えした通り、うつ病と適応障害の違いは、うつ状態に陥った背景の有無や、神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンなど)が正常に機能しているか否かといった点があげられます。
適応障害になりやすい人ってどんな特徴がある?
必ずしも当てはまるわけではありませんが、適応障害になりやすい人には以下のような性格特性を持つ方が比較的多い傾向があります。
- 責任感が強く、できないと自分を責めがちな人
- 頼まれると断らず、困っていてもあまり人に頼らない人
- 傷つきやすく、きりかえが苦手な人
- 白か黒か、ALL or Nothingで考えがちな人
- 悪いことだけに特に焦点を当てて考えがちな人
知って損なし!適応障害の3つの治療法
適応障害の治療には大きく3つのことが大切です。
適応障害の治療法(その1):ストレスの原因の除去
ストレスの原因の削除、つまり生活環境や仕事環境などを調整することです。たとえば暴力をふるう上司から離れるために、部署移動を求めるなどがこれにあたります。適応障害は直接となるストレス原因が無くなればうつ状態ではなくなるため、まずはストレスの原因をご自身の環境から無くしていく努力が必要です。
適応障害の治療法(その2):認知行動療法などの精神療法
ストレスの原因に対して本人がどのように受け止めているかを分析していくと、受け止め方のパターンや特徴がはっきりと見えてくることが多いです。この分析結果で得られたパターンや特徴を元に、ストレスへの耐性や受け流し方を身に着けていくのが『認知行動療法[※2]』で、こういった精神療法が適応障害の治療には役立つことが確認されています。
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※2
※3
適応障害の治療法(その3):薬物療法(対処療法として)
薬物療法は、落ち込みや不安、不眠、うつ状態等、症状の対処に有効なことが多いです。症状をやわらげた上で、根本的なストレスなどに対処するために、環境調整や認知行動療法などの精神療法と併用することが有効と言われています。
適応障害の治療に関する注意点
適応障害で、仕事を離れて回復、環境調整だけして復職という流れだと、調整しきれないストレス因もあり、再発のリスクがあります。そのため、認知行動療法などで根本的な予防治療に取り組むことをオススメしています。
うつ病と適応障害の違い(まとめ)
うつ病と適応障害の違いをご理解いただけましたでしょうか。違うとはいえ、うつ状態であることに変わりはありません。仕事や私生活に何らかの影響が出ていて、休職などを検討されている方もいるでしょう。
先にも述べましたが、うつ病と適応障害では、治療方法が諸状況によって異なってきます。ご自身や身近な方で思い当たる場合は、まずはお近くの医療機関へ相談してみましょう。
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(参考:リヴァトレ よくあるご質問)
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産業医科大学 医学部医学科卒業。新日鐵住金(株)専属産業医、(株)三越伊勢丹ホールディングス統括産業医を経て現職。日本産業衛生学会 産業衛生専門医、産業医科大学 非常勤助教。現在、複数の日系企業や外資系企業の産業医、コンサルティングを行っている。