適応障害がなかなか治らないときは? 治療にかかる平均期間、対処方法などについて解説!

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適応障害は、日常のストレスが原因でこころや身体に不調をきたしている状態です。「治療を続けているのに、なかなか改善しない」と不安や焦りを感じている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、適応障害の原因や治療法、治療期間についてに加え、症状がなかなか治らないときの具体的な対処法について解説します。不安を少しでも和らげ、回復に向けて前向きな一歩を踏み出すきっかけにしてください。

適応障害とは?症状や診断基準について解説

まずは適応障害の基本的な情報を知っておきましょう。

適応障害とは、何らかのストレスを原因(生活の変化や出来事)として、普段の生活が送れないほど抑うつ気分や不安、心配が強くなり、ストレスを感じる環境に適応できなくなった状態のことを指します。

適応障害の主な症状

適応障害によくみられる症状には、次の一覧のようなものが挙げられます。

<情緒的な症状>

不安、抑うつ、焦燥、過敏、混乱、緊張など

<身体症状>

不眠、食欲不振、動悸、全身倦怠感、疲れやすい、頭痛、肩こり、腹痛、吐き気、めまいなど

<問題行動>

遅刻、欠勤、早退、過剰飲酒、ギャンブル中毒など

適応障害の診断基準

DSM-5(米国精神医学会による適応障害診断基準)によれば、上記のA~Eの全てを満たす状態を適応障害の診断基準とされています。また、ICD-10(世界保健機構が定めた適応障害診断基準)によると「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」と定義されています。

つまり適応障害とは、ストレスの原因(ある生活の変化や出来事)がその人にとって非常に重要で、普段の生活がおくれないほど抑うつ気分、不安や心配が強くなり、それが明らかに正常の範囲を逸脱している(≒その環境に適応できなくなった)状態といえます。

※DSM-5/ICD-10について

「適応障害」の臨床診断には、米国精神医学会が定めたDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 「精神障害の診断と統計マニュアル」)や世界保健機構が定めたICD-10が国際的に利用されています。日本の医療機関では、双方の診断基準をそれぞれを使い分けて診断にあたっています。

適応障害はどうしたら回復する?3つの主な治療法とは

適応障害は、特定のストレスが原因となって心や体に不調をきたす状態です。しかし、適切な治療を受ければ回復が期待できます。

ここでは、適応障害の治療に効果的とされる3つのアプローチをわかりやすく解説します。ご自身の状態に合った治療法を知るきっかけにしてください。

①ストレスの原因の除去

ストレスの原因の除去とは、生活環境や仕事環境などを調整してストレス原因を遠ざけたり、解決したりすることです。たとえば暴言を口にする上司から離れるために、部署移動を会社側に求めるなどがこれにあたります。適応障害は、直接原因となるストレス原因から距離を置くことで、症状の軽減が期待されるため、まずはストレスの原因をご自身の環境から無くしていくような対応が必要です。

②認知行動療法などの精神療法

ストレスの原因に対して本人がどのように受け止めているかを分析していくと、受け止め方のパターンや特徴がはっきりと見えてくると言われています。ご自身のストレスの原因の捉え方に関する特徴を元に、ストレスの受け流し方を身に着けていくのが「認知行動療法」です。

認知行動療法は、ストレスの原因が出来事そのものではなく、その出来事に対する「考え方」や「捉え方」にあると考えます。

例えば、仕事で失敗した時に「仕事で失敗した自分は無能だ」とすぐに自己否定的に考えてしまう傾向があるとすれば、認知行動療法で用いるシートを使って、「一度の失敗で自分の価値は決まらない」「仕事が成功している時もある」など、現実と照らし合わせて考え方や捉え方の幅を広げていく練習を行います。

こういった精神療法は、適応障害の治療に役立つことが確認されています。

③薬物療法

薬物療法は、落ち込みや不安、不眠、うつ状態等、症状の対処に有効なことが多いです。

ただし薬物療法はあくまでも対処療法のため、症状をやわらげた上で、根本的なストレスなどに対処するための環境調整や、認知行動療法などの精神療法と併用することでより有効になると言われています。

適応障害が治るまでどのくらいかかる?

適応障害は「症状の原因となったストレスが明らかで、そのストレスがあった日から3か月以内に発症する」ことが特徴です。そして「原因となるストレスがなくなれば、6か月以内に症状がおさまる」と言われています。

ただし、適応障害の原因となったストレス要因をきちんと排除できていなければ、症状が再発する恐れがあります。

たとえば休職して仕事を離れたことで回復したものの、環境調整だけして復職という流れだと、調整しきれないストレス要因もあり、再発のリスクが高いと言えるでしょう。そのため、原因となるストレスを取り除くことや、認知行動療法などでストレスに対する対処法を身につけることが重要です。

適応障害で休職・離職した場合は、「リワーク」を利用して復帰の準備をするのがおすすめです。リワークでは認知行動療法をはじめとするストレス対処方法を学ぶことができるため、社会復帰した後の再発を予防する効果があります。

リワークについては「適応障害が治らないときは『リワーク』も活用しよう」の章で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

適応障害がなかなか治らない場合の対処法は?

適応障害の治療に取り組んでいても、なかなか症状が改善しないと、「このまま治らないのではないか」と不安や焦りを感じることもあるでしょう。そんなとき、どのように対処すればよいのかを具体的に解説します。ひとりで抱え込まずに、適切な方法を検討してみてください。

相談窓口へ相談する

適応障害の症状に悩んだとき、ひとりで抱え込まずに相談できる窓口を活用することは、回復への大切なステップとなります。

1.精神保健福祉センター

精神保健福祉センターとは、各都道府県や政令指定都市に設置されている支援機関で、心の健康に関する幅広い相談が可能です。診断を受けていない段階でも利用でき、電話や対面で相談を受け付けています。医師や精神保健福祉士、臨床心理士など専門スタッフが対応するため、どこに相談すれば良いか分からない方にも適しています。

「全国精神保健福祉センター一覧」のサイト:https://www.zmhwc.jp/centerlist.html

2.医療ソーシャルワーカー

医療ソーシャルワーカーとは、主に病院に勤務する専門職で、治療や療養中の心理的・経済的な悩みの解決をサポートします。支援制度の利用や社会復帰に向けた提案が受けられるため、現在通院中や入院中の方にとって頼れる存在です。

医療ソーシャルワーカーが在籍している病院を検索できるサイト:https://www.jaswhs.or.jp/about/kyoukai_hospital.php

3.こころの耳

こころの耳は、厚生労働省運営のポータルサイトで、職場のメンタルヘルスや過重労働対策に関する情報を提供しています。電話、SNS、メールでの相談が可能で、気軽に利用できるのが特徴です。初期相談として活用するのに適しています。

メンタルヘルスのポータルサイト「こころの耳」:https://kokoro.mhlw.go.jp/worker/

セカンドオピニオンを受ける

現在の治療が合っているのか不安に思った場合、セカンドオピニオンを受けることも検討してみてください。セカンドオピニオンとは、主治医以外の医師から「第2の意見」を聞くことです。新たな視点から治療方針を確認することで、より納得感のある治療選択が可能になります。また、現在の治療法に対する理解が深まり、再発予防や回復への安心感を得られることもあります。セカンドオピニオンを希望する場合は、まずは主治医に相談して進めるとスムーズです。

ストレス対処法を身に付ける

適応障害はストレスが大きな要因となるため、ストレスを上手に管理するスキルを身に付けることが回復につながります。代表的な対処法である認知行動療法(CBT)では、ストレスの原因に対する考え方を柔軟にする方法を学びます。

認知行動療法は、気分の変化が出来事そのものではなく、その出来事をどう受け止めたか(認知)や行動したかによって起こると考える治療法です。

たとえば、仕事でミスをして「もうダメだ」と捉えやすい特性があるならば、それ以外の捉え方(例えば次の改善点が見えたと捉えるなど)」の練習をします。現実と照らし合わせ、バランスの取れた考え方や行動をしてみることで、ストレスに対処する力を育むアプローチです。

ストレス対処法は専門の支援機関やリワークサービスの復職支援プログラムで学ぶことができますので、気軽に問い合わせてみてください。

自己判断で通院をやめない

治療が思うように進まないからといって、自己判断で通院を中止するのは避けましょう。治療を中断すると症状が悪化したり、再発リスクが高まったりする可能性があります。 薬物療法を受けている場合も、医師の指示なしに薬の量を調整するのは危険です。通院を継続しながら主治医に現在の状況や服薬に関する自身の考えをしっかり伝え、治療方針を相談することが大切です。

適応障害が治らないときに受けられる経済支援制度

休職中、収入が減ったり、給与が得られなくなったりといったお金に関する心配は、適応障害の悪化のリスクを高める可能性があります。

金銭的な不安にかられて体調が悪いまま焦って活動をしなくても済むよう、公的な経済支援制度についても知っておきましょう。

適応障害などのメンタル不調の方がもらえる手当には、様々な種類があります。ここでは主な制度を簡単に説明します。

傷病手当金

傷病手当金は、健康保険、各種共済組合などの被保険者が、病気やけがで働けなくなっている期間に受け取ることのできる給付金です。

目安として、「休職前の給与の約3分の2の金額」が支給されます。また、受給期間は「受給開始日から1年6か月が上限」になります。

自立支援医療制度

自立支援医療制度は、適応障害などメンタル不調で通院が必要な際に、医療費の一部について支援を受けられる制度です。

指定の医療機関を受診する必要がありますが、診察費・薬代・デイケア費・訪問看護費の自己負担額が「原則1割に軽減」されます。

労働者災害補償保険

いわゆる「労災」です。適応障害が仕事による過度のストレスやプレッシャーから発症した場合、労災保険を利用することができる場合があります。

たとえば、過労や職場でのトラブルが原因で適応障害になった場合などです。医療費や休業中の給料を支給してもらえることがあります。

ただし、適応障害が仕事に関係していることを証明するために、診断書や証拠が必要です。労災保険は、働く全ての人に適用されるので、該当する場合は申請を検討してみてください。

その他の経済的支援制度

他にも、失業保険、生活福祉資金貸付制度、生活保護など、様々な制度があります。詳細は、以下の記事でも紹介しているので、参考にしてみてください。

適応障害が治らないときは「リワーク」も活用しよう

適応障害がなかなか治らない場合、「リワーク」の活用も検討してみましょう。

リワークとは、「Re-Work(再び働く)」を意味しており、適応障害やうつ病などの精神面の不調からある程度まで回復したメンタルヘルス不調者を対象に、職場・社会復帰を目指すプログラムのことです。対人コミュニケーションやストレス対処法など、利用者の特性や体調に合わせた様々なプログラムが用意されています。

適応障害などのメンタルヘルス不調は、休息や服薬によって症状が回復したとしても、社会復帰後に再発を招きやすい病気です。

というのも、休職期間・療養期間が長引くと、体力・集中力・コミュニケーション力などがどうしても低下していくため、仕事復帰する際の負荷が大きく、ストレスを感じやすくなってしまうのです。再発後は休職期間が長期化したり、何度も休職と復職を繰り返すことも珍しくありません。

自宅療養と復職(あるいは再就職)の間に存在する大きなギャップを無くし、再発を防ぐためには、リハビリが必要です。スポーツ選手が怪我をした際にリハビリが不可欠なように、メンタル不調によって仕事を離れた方が段階的に社会復帰していくためのリハビリ機関にあたるのがリワークです。

リワークについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

ストレス対処法を身に付けて自分らしく働くリワーク「リヴァトレ」

リヴァトレとはメンタル不調の方向けの復職・再就職支援サービスです。

職場へ通勤するようにセンターへ通いながら、よりよい復職・再就職を目指してトレーニングを行います。グループワーク形式で行われる多彩なプログラムにより、心身のコンディションを整えていきます。

リヴァトレでは、適応障害などメンタル不調回復のヒントになるプログラムも数多く提供しています。ストレスを感じた際にどのように受け止め、どのように対処するかを練習することで、日常生活や職場でのストレスに対応できる方法を身につけられます。

認知行動療法で不安やストレスを軽減

リヴァトレでは、認知行動療法をグループで行う「集団認知行動療法(CBGT)」を導入しています。

グループで行うことで自分にはない視点の意見に触れることができ、様々な捉え方を知ることができます。どんな場面でも自分の反応を“絶対のもの”と考えなくてよくなり、捉え方の選択肢が広がることが集団認知行動療法(CBGT)のメリットです。

また他の参加者の事例について考えたり、意見を述べたりしているうちに、自分のことについても新しい捉え方ができるようになる人もいます。

アサーションでストレスの少ないコミュニケーションを学ぶ

リヴァトレでは、「アサーション」と呼ばれる、自分も相手も尊重するコミュニケーションスキルを学べます。

人間関係のストレスは、コミュニケーションがうまくいかないときに生じることが多いものです。アサーションを通じて、適切に自分の気持ちを伝え、相手の意見にも配慮する方法を練習することで、衝突や誤解を減らせるようになります。

プログラム内では、ロールプレイを用いてリアルな場面を想定しながら、アサーティブな自他尊重の表現方法を身につけます。「自分の言いたいことを伝えつつも、相手を尊重する」というスキルは、復職後の職場や家庭でも活用できるでしょう。

プログラムだけでないリヴァトレのメリット

リヴァトレでは、職場へ通勤するのと同じように、センターへ通いながら復帰に向けたトレーニングを行います。規則正しい生活が身に付けられるため、生活リズムの改善にも役立ちます。

また疾病理解やビジネススキル向上など、利用者の特性や体調に合わせた様々なプログラムが用意されています。一人一人に合わせた復帰プランとプログラムで、「自分らしい働き方」を見つめ直すことができるのも大きな特長です。

同じ悩みを持つ仲間と共感し合い、時には試行錯誤をしながら支え合うことで、自宅療養だけでは得られない孤独や不安の解消にも繋がります。

おわりに

適応障害の症状がなかなか改善しない場合でも、適切な治療や対処法を取り入れることで回復の可能性は広がります。ストレス対処法を学んだり、相談窓口やリワークを活用することで、自分に合った方法を見つけることが大切です。

焦らず、自分のペースで治療と向き合いながら、一歩ずつ回復への道を歩んでいきましょう。

まずは無料パンフレットをご覧ください

リヴァトレは、うつなどのメンタル不調でお悩みの方の復職・再就職をサポートするリワークサービスです。

復帰に向けて行う取り組みについて、無料パンフレットでわかりやすくご紹介しています。

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この記事の監修
四谷 健太郎
株式会社リヴァ リヴァトレ事業部 生活支援員 臨床心理士/公認心理師1985年東京都生まれ。
世田谷区の教育相談員→民間企業の治験コーディネーターを経て、2021年に株式会社リヴァに入社。森田療法を基にした相談支援を行っている。趣味はコーヒーのハンドドリップ。

 

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