最近、集中力が続かず仕事が手につかなくなってしまった…… といったことから「もしかして自分はうつ病や適応障害なのでは?」とお悩みの方はいらっしゃいませんか?
本記事ではうつ病や適応障害の症状と思われる原因によって、以前のように仕事に取り組めなくなったと悩まれている方向けに、「誰にどう相談したらよいか?」「うつ病と仕事は両立できるのか?」といった疑問にお答えしつつ、「具体的にどのような対処をしたらよいのか」について、押さえておきたいポイントを専門家が解説します。
目次
この症状ってうつ病?適応障害?セルフチェックしてみよう
正確なうつ病や適応障害の診断を受けるためには医療機関の受診が必要ですが、まずはご自身の状況を把握するために、うつ病の簡易チェックリストでセルフチェックしてみましょう。
【うつ病の簡易セルフチェックの例】
□眠るのに時間がかかる
□寝ている間によく目が覚める
□朝、早く目が覚めすぎてしまう
□昼までずっと眠りすぎてしまう
□悲しい気持ちが続いている
□以前に比べて食欲が減った、または増えた
□集中力・注意力の低下
□自分を責めがちになっている
□以前好きだったことが楽しくなくなった
□日常の活動(買い物や料理など)に大きなエネルギーを使い、疲れてしまう
□頭の働きが遅くなって、質問に答えるのに時間がかかる
□気持ちが落ち着かない
参考:日本語版自己記入式・簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS -J)
これらが当てはまったからといって、すぐにうつ病と決まるわけではありませんが、2週間以上続いていて仕事が手につかないといった支障が出ているようであれば、まずは心療内科や精神科などの医療機関を受診することをお勧めします。
他にも、次のような症状が当てはまるようであれば要注意です。うつ病や適応障害をはじめとするこころの不調は個人差があり、様々な症状が出る可能性があるため、自分に出ている症状をメモにまとめておくと、正確に他の人に説明しやすくなります。
【身体に出やすい症状】
頭痛やめまい、動悸、疲れやすさ、首・肩などの凝り、便秘や下痢、胃痛、吐き気 など
【こころに出やすい症状】
憂うつ、不安、焦り、イライラしやすくなった、自信の喪失、意欲と興味の減退、集中力の低下、注意散漫 など
【行動に出やすい症状】
人と話すのが億劫になる、仕事に行く日の朝や休み明けに調子が悪くなる、遅刻が増える、仕事のミスが増える、新聞やテレビを見なくなった、整理整頓ができなくなった など
もしうつ病や適応障害の疑いがある場合、どこに相談すればいい?
セルフチェックの結果からうつ病や適応障害を疑われた方は、医療機関の受診とお勤め先への相談をお勧めします。
「精神科の病院って怖いイメージがある……」「会社の上司に相談したら自分の評価が下がらないだろうか……」といった心配から、相談することをためらってしまうこともあるかと思いますが、相談をすることで次のようなメリットが得られます。
①自分の状態を整理して、客観視できる
自分の状態を言葉で説明したり、メモに書いてまとめたりしていると「今、自分がどんな状態なのか」を客観的に見ることができます。また他の人に相談することで、自分以外の視点が得られ、思いつかなかった解決のヒントが得られる可能性も高くなります。
②周囲にSOSを発信することができ、サポートの必要性を伝えることができる
仕事が手につかないことを自分から発信しないと「相談がないから大丈夫そう」と思われ、サポートがなされないままになる可能性があります。相談をすることで、環境や仕事量の調整などの解決策を一緒に考えるきっかけになることもあります。
③気持ちが落ち着き、安心感を得られる
悩みをひとりで抱えていると「こんなことで悩んでいるのは自分だけだ」というようにどんどん気持ちが内向きになり、悩みの悪循環に陥る可能性があります。自分の気持ちを周囲に発信することで安心感を得られ、悩みの悪循環を断ち切るきっかけにもなるかもしれません。
以上のようなメリットがあるため、自分がうつ病や適応障害かもしれないと悩んだ際は、ひとりで抱え込まず、周囲の信頼できる人に相談して協力を得ましょう。
うつ病や適応障害の疑いに関する身近な相談窓口
【勤め先や産業医への相談】
勤め先にこころの不調を相談する場合、まずは直属の上司に相談することを検討してみてください。自分の置かれている環境を身近で把握している上司に相談することで、休職に至る前に職場環境や業務量の調整を行うなど、仕事と両立できるよう、体調立て直しの対策を打てる可能性があります。また会社内の産業医や、相談窓口となる人事部に繋いでくれることもあり、話がスムーズです。
しかし直属の上司だからこそ、直接相談するハードルが高いこともあるでしょう。その場合、会社の人事部に直接相談するという方法もあります。人事部はうつ病や適応障害などメンタル不調者への対応や休職の手続きを担当する部署でもあるので、会社内の相談窓口として機能します。
また会社の産業医に相談することも重要です。産業医は医学の専門家として、社内の労働者の健康管理を担当しています。うつ病かもしれないという悩みについても、産業医に相談し判断を得られるとよいでしょう。近年、産業医面談は対面のほかオンラインでも受けることができるようになりました。産業医面談を希望される場合は、社内での相談方法を上司や人事等の社内窓口に確認してみて下さい。
ただし、産業医は「従業員50人以上の事業所」では設置することが義務づけられていますが、「50人未満の中小企業等」では任意となっています。
【医療機関の受診】
うつ病や適応障害が疑われる症状が2週間以上続き、仕事への支障が出ているのであれば、なるべく早く医療機関(精神科・心療内科)を受診することをご検討ください。実際にうつ病や適応障害であった場合、放置することで症状が悪化したり、回復までに長い時間が必要になったりするリスクがあります。
医療機関では症状の相談のほか、治療薬の処方や他の専門機関への紹介など、様々な支援の手段に繋がることが可能です。また休職する場合、医師の診断書の提出も必要になりますので、早めに主治医と相談しておけるとよいでしょう。
日本でのうつ病の相談は、主に精神科もしくは心療内科が対応しています。精神科・心療内科については診察の内容に大きな違いはないので、ご自身が通いやすいと思える医療機関を探して受診してみてください。
また既にうつ病などの診断を受けている方は、仕事が忙しい場合でも通院を継続し、治療と仕事の両立を続けていただくことが大事です。
【その他の相談窓口】
いきなり会社や医療機関に相談するのはハードルが高い…… と感じられている方は、次のような相談窓口の利用を検討してみてください。
①公共の相談窓口
・保健所
・精神保健福祉センター
※参考資料:厚生労働省の検索サイト
これらは、お住まいの自治体に設置されている公的な相談機関です。うつ病や適応障害などの疑いでで仕事が手につかなくなったとき、必要となる対応についての助言や、医療機関の受診についての相談など、こころの健康に関する幅広い内容を相談することができます。
うつ病や適応障害と仕事って両立できるの?
うつ病や適応障害かもしれないという悩みを周囲に相談し、医療機関から診断も受けた場合、「仕事を休んだり辞めなければいけないの?」「治療のために会社に行けなくなったら、お金はどうするの?」など、仕事と両立することへの不安が次々と出てくるかもしれません。
ここでは、うつ病と診断された場合、どのようにして仕事と両立していくかについて解説します。
参考記事:うつ病の克服~仕事しながら克服するために大切な5つのこと~
参考動画:【うつ×仕事】うつ病と診断された時、「働きながら」治療する際の注意点を分かりやすく解説!
【うつ病や適応障害と仕事の両立のポイント】
まずうつ病や適応障害と診断された場合、主治医の治療の指示に従うことがもっとも重要です。うつ病の治療には休養を取ることが最優先となります。そのため、仕事を一時的に休職して療養に専念するよう、主治医に指示されることもあるでしょう。
休職の手続きは主治医の診断書をもとに会社の人事が対応し、手続きの途中で産業医の面談などが入ってくることもあります。休職は、あくまでも特定の期間会社を休んで療養に専念することであり、うつ病や適応障害になったからといって会社を辞めなければならないわけではありません。体調が回復してくれば、主治医の許可を経たうえで復職することが可能です。
またうつ病や適応障害で休職をしている際は「傷病手当金」を受け取ることで、給与を受け取れない期間の生活費などを得ることができます。詳しくは以下の記事をご参照ください。
参考記事:傷病手当金とは?休職時の収入が不安なときに知っておきたい制度
うつ病や適応障害とは診断されなかったとしても、こころと体の調子を整えながら仕事を続けていく場合も考えられます。いずれの場合も、以下の3つのポイントを守ることが重要です。
①生活リズムを整える
うつ病や適応障害により体調が崩れている場合、睡眠・運動・食事の生活リズムが崩れがちになり、仕事を行う時間に活動ができなくなっていくことも考えられます。そこで生活リズムを意識して整えていくことが重要になります。
特に睡眠は疲労回復のために重要なので、就寝・起床時間を一定にしつつ、十分な睡眠時間を確保できることが望ましいです。
適度な運動をすることで身体が疲れ、睡眠をとりやすくなるとされています。 また運動を行うことで食欲が出てくるため、無理のない範囲での運動を行うことを起点に、睡眠・運動・食事を整えていけるとよいでしょう。
②自分の状態について理解する
自身の体調を把握するためにもセルフチェックが重要です。例えば注意力や集中力が落ちてしまうことで、それまでできていた仕事が手につかなくなったり、できる範囲などが変わってくる可能性があります。うつ病や適応障害の症状の現れ方は人それぞれですので、自分にどのような不調の傾向があるかを知っておけると、対策も立てやすくなります。
また、どのような症状が出ているか理解しておけると、仕事や家庭で一緒になる人たちや、医師などに状況を説明する場合にもスムーズです。
③主治医の治療の継続と相談
うつ病や適応障害と診断された場合、仕事と並行して医療機関での治療を続けていくことが必須となります。特に服薬を継続することが大事で、一時的に「良くなったかな?」という場合でも、自己判断で服薬を中止しないようにしましょう。
仕事とうつ病や適応障害の治療を両立していく場合、現在の体調や職場環境について、定期的に相談することも重要になってきます。主治医との診察時間を長時間取ることは難しいケースが多いため、その場合はカウンセリングルームなどでまとまった時間のカウンセリングを受けることも効果的です。話すことで気持ちが整理できますので、仕事での不安や落ち込みなどを軽減しながら仕事を続けることができると考えられます。
今すぐにできる対処法、セルフケアとは?
ここまで相談機関の紹介や、うつ病・適応障害の治療と仕事を続けるための両立のポイントなどについて解説してきました。しかし、すぐに相談できる場所が見つからない、あるいは病院が予約待ちですぐには行けないということもあるかと思います。そういった場合、まずは身近にできるセルフケアから始めてみましょう。
不調の中で無理して活動を続けると、回復にさらに時間を要する可能性があるため、まずは休養を取り、活動量を意識的に抑えること(行動抑制)が大切です。
参考動画:うつ病等の当事者に聞いた!すぐに実践できるセルフケアの紹介
おわりに
今回の記事では、うつ病や適応障害の可能性があり、仕事が手につかないことに悩まれている方に向けて、押さえておきたいポイントを解説しました。
こころの不調を感じたら、なるべく早い段階で周囲に相談することが望ましいと考えますが、相談のハードルが高い場合はセルフケアを試してみるなど、まずはご自身を大事にされる行動から試してみてください。
もしうつ病や適応障害で休職となったら、復職前にリワークの活用を!
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生活支援員 臨床心理士/公認心理師
1985年東京都生まれ。
世田谷区の教育相談員→民間企業の治験コーディネーターを経て、2021年に株式会社リヴァに入社。
森田療法を基にした相談支援を行っている。趣味はコーヒーのハンドドリップ。