こんにちは。リヴァトレ事業部の仲井眞です。
この記事(前後編の計2回)ではリヴァトレの利用者さんが再就職して安定的に働くまでのプロセスについて、モデルケースを通じてご紹介します。
前編となる今回は、就職活動を始めるまでの準備の様子をたどっていきます。
目次
モデルケースであるAさんのプロフィール
モデルケースであるAさんのプロフィールは以下の通りです。
・マネージャーとなったことをきっかけに、職責の違いや仕事量の増大、人間関係に悩み、眠れぬ日々が続くように。
・クリニックを受診したところ、うつ病との診断を受けて休職。一度は復職するも「休んだ分を取り戻そう」と無理をしてしまい、再び体調を崩して再休職。
・休職中に「新しい場所でやり直したい」と考え、転職を果たす。しかし入社3か月目で症状が再々発し、退職。
二度の休職と転職を経て、退職。 「うつ病と向き合う場所」としてリヴァトレを選ぶ
二度の休職と転職を経て「うつ病としっかり向き合う必要がある」と感じたAさん。
他施設も並行して検討しましたが、仕事さながらの実践的なプログラムがあることから「自分にはリヴァトレが合う」と感じられました。
また、障害者枠ばかりでなく一般枠での就労実績も多かったため、正式に利用することを決めました。
「いまやること」に焦点を当てる
「ブランク(離職期間)が長引くのが怖い。家族のためにも就職活動を開始しなければ」という強い不安や焦りを感じていたAさんは、スタッフとの面談でこれまでの仕事や疾病を患った経緯について説明しました。
スタッフはAさんが次のステップに進むために必要なことを検討し、「個別支援計画※」に落とし込んでいきます。
その結果、まず優先して取り組むべき課題は「生活リズムの安定」と「疾病と自分への理解を深め、ストレス対処のヒントをつかむこと」の2つだと納得することができました。
生活リズムの安定
1つ目の「生活リズムの安定」について、まずは「午前中から活動ができる状態」を目指しました。
退職後、昼夜が逆転したような生活を送っていたAさん。午前のうちに起きることにも辛さを感じる状況でした。
そこで、まずは「週2日、午後から」の通所を開始。
体が慣れたところで週3日通所へ、そして午前通所へ…と通所日数や利用時間を段階的に増やしていき、3か月ほどかけて「週5日、午前から」活動できるように生活を整えていきました。
ウォーキングと生活習慣の振り返りを行うプログラムも、生活のリズムを作り、食事・睡眠・運動などの習慣を見直すために役立てました。
ストレス対処のヒントをつかむ
優先したい事項の2つ目である「疾病と自分への理解を深め、ストレス対処のヒントをつかむこと」については、うつ病についての基本的な知識を学ぶ講義や、『自己分析』などのプログラムを通じて取り組んでいきました。
自己分析では「完璧主義で自分に厳しい」「人に頼らず自分の力で解決しようとする」という自身の傾向が見えてきました。
そして「私なりの気分転換」や「“頑張る”と“無理をする”の違いは?」など、都度設定される様々なテーマについてグループで自由に話し合う『ダイアログ』への参加も有用でした。
疾病をオープンにできる環境だからこそ本音が出しやすく、言葉にすることで、自分の本当の気持ちに気づくことが多くあったのです。
他の人の意見や取組みからヒントを得ることにもつながりました。
うつからの再就職を目指し、
就職活動の準備を開始
自分なりの対処法を確立
疾病や自分への理解が深まってきた段階で、自身のストレス反応と対処の方法について、コーピングシート※としてまとめていきました。
Aさんがストレスへの対処として特に役立つと感じたのは『集団認知行動療法』。
心理学的なアプローチをもとに、バランスの良い考え方を身に付けていくことを目的にしています。
このプログラムを通じて、職場で調子を崩した時のことを振り返ると「マネージャーなんだから、自分一人の力で解決ができなければ意味がない」「部下は新規顧客を獲得できない自分のことを無能だと思っているに違いない」といった極端で非合理的な考え方をしており、自分で自分を苦しめていたことに気づきました。
「7つのコラム※」、「問題解決ワークシート※」といったツールについて学び、実生活でストレスが生じた場面でも実際に活用するうちに、極端な考えが出た際に自ら気づき、修正していくことができるようになっていきました。
「提案営業の仕事は、やっぱり好き」
リヴァトレへ安定的に通所できるようになってきた頃、Aさんは『キャリアデザインワーク※』に参加しました。
営業の仕事に自信を失いかけていたAさんでしたが、このプログラムに取り組む中で「やはり自分は提案によって顧客の問題を解決していくことが好きだ」と気づきます。
特に、SE出身である強みを活かして顧客に具体的な提案をしたり、社内の開発メンバーに橋渡ししたりできる時に一番力を発揮することができて、いきいきと働けていたことも発見しました。
そこで、担当顧客が明確に決められている「アカウント営業」の案件を中心に就職活動を進めるよう、方向性を定めていきました。
▶ 後編(就職活動~就職後)に続く