解説コラム
私は前職時代に「双極性障害Ⅱ型」と診断を受けたものの、対処の仕方が分からずに再休職し、最終的には退職しました。
どうしていいか分からず途方に暮れていたところ、前職の上司に声を掛けてもらって利用を始めたのが、双極性障害やうつなどの再発予防トレーニングを提供する「リヴァトレ」(旧オムソーリ)でした。
そのサービスを利用するまで、私は自分以外の双極性障害を患う人に会ったことがありませんでした。
また、インターネットで「双極性障害の特徴」などを見て「自分に当てはまるだろうな」と思いましたし、主治医にも診断されてはいましたが、どこか自分が当事者であることを受け入れられずにいました。
私が過去に転職を繰り返してきたことも、「(気分が上がっている)軽躁状態の時に転職し、うつ状態の時に休職離職をしてきた」とも思える一方で、「飽きっぽい性格だからなんじゃないか」と思う自分もいて、なかなか双極性障害という診断が腑に落ちずにいたのです。
そんなとき、施設の中で初めて同じ双極性障害Ⅱ型の診断を受けたAさんに会いました。
初対面の印象は「穏やかで人当たりのよい人だな」というもので、トレーニングも落ち着いて周囲とも仲良く取り組んでいました。
ところが、ある日を境に「やたらとしゃべるし、声が大きい」「自分が感銘を受けた本を人に強く薦める」「提案するアイディアが壮大でボリュームも盛り沢山」「Twitterの発信が大量で攻撃的な表現もある」といった傾向が見られるようになりました。
Aさんのそんな姿を目の当たりにして「自分にもこのような時があるんじゃないか」「本来の性格ではなくて、双極性障害の症状がそうさせているのかもしれない」と思いましたし、診断が腑に落ちる大きなきっかけともなりました。
このような経験から私は、インターネットの情報や主治医の言葉だけでなく、同じ疾患を抱える人と会って話すことからも、得られる気づきはとても多いと考えています。
私のように施設に通う機会が無くても、いまは各地で当事者会が催されていますし、中にはオンラインで参加できる当事者会もあるようです。
最初は勇気がいるかもしれませんが、こうした場に一歩踏み出すことも、疾病への対処法を身に付けることにつながっていくのではないかと思います。
双極はたらくラボ編集長/公認心理師/精神保健福祉士
1982年島根県生まれ。21歳の時に双極性障害を発症。20代で転職3回休職4回を経て、リヴァの社会復帰サービスを利用。後に同社へ2012年に入社(現職での休職0回)。 一児の父。