双極症当事者として仕事を続けるため、松浦秀俊が歩んだ道|新著発売記念インタビュー

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双極症II型当事者で、株式会社リヴァで勤続13年目(2024年9月現在)を迎える松浦秀俊。

2024年9月27日、双極症でも働き続けるヒントが見つかる書籍『ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法』を発売しました。

発刊を記念し、松浦に、双極症と向き合い働き続けられるようになるまでの苦悩や出会い、書籍に込められた想いについて聞きました。

松浦秀俊(まつうら ひでとし)

1982年島根県生まれ。双極症II型と付き合いながら、株式会社リヴァで双極事業部部長として働く。

精神保健福祉士、公認心理師。「双極症」と「働く」がテーマのWebメディア「双極はたらくラボ」や当事者会「双極はたらくトーク」を運営。

2025年には双極症の就労支援に特徴がある「双極はたらくチャレンジ」を東京都内で開設予定。

双極症ではなく、うつ病と診断された大学時代

──双極症を発症したのは、いつ頃からでしょうか?

おそらく大学4年生のときです。ただ、当時はうつ病と診断されました

理系の大学に通っていて、周りの友人たちは大学院に進学する道を選んでいました。でも、私は研究に興味がなく、起業したいと思っていたんです。だから、新規事業に関われる会社に入るべく就活をしていました。

しかし、内定をもらった後になって、自分の進むべき道が分からなくなり、不安が押し寄せてきました

単位を取り終えた大学4年次は、研究室に通う回数も少なくなり、誰にも相談できず一人で悩み、家に引きこもって寝ている時間が増えて…「社会人になるんだから、しっかりしなきゃ」と焦りも募りました。

そんな時、たまたまうつ病に関するニュースを見て、「自分もうつ病かも」と思い、勇気を振り絞って精神科を受診。うつ病と診断を受けたのですが、処方薬を飲んで気分が良くなったので、1回で通院をやめてしまいました

でも、当時から双極症の症状は表れていたと思います。夜も寝るのがもったいないほど活動的になったかと思えば、しばらくすると体力が尽きて、何もできなくなる…といったサイクルを繰り返すことが多々ありました。

 

──双極症の診断を受けたのは、いつ頃でしたか?

うつ病の診断がおりてから6年後でしたね。前職で人事に1度目の休職の相談をした際に、「うつ病ではないかもしれない」と言われたんです。

「新しいプロジェクトに参加すると、初めは活発に動くけど、急に失速する傾向にある」と。その後改めて精神科を受診し、初めて双極症の診断がおりました。

ちなみに前職の人事は、現在リヴァで取締役を担っている青木です。

症状のコントロールが難しく、退職を決意

──前職では、双極症の症状をコントロールしながら仕事をするのが難しかったそうですね。

そうですね。特に初めは仕事をしながら、症状をどのようにコントロールすれば良いかが分からず大変でした。

薬を処方されましたが、それだけでは解決せず…。認知行動療法のように、自分の思考と行動の癖を見つけ、ストレスに対処するトレーニングも試みようとしましたが、当時は実施している施設も少なかったですし、仕事も忙しく、時間が取れませんでした。

さらに、新規プロジェクトのリーダーに任命されたこともプレッシャーになっていました。目標を達成できず、役に立てていない感覚が強まり、どんどん自分を追い込んでしまい…。

責任のあるポジションに任命されるほど、会社では評価されている一方で、結果が出せない自分に失望し、仕事が辛くなっていったんです。その後、前職で2度目の休職をしました。

 

──再休職に至ってしまったんですね。

最終的に、東日本大震災の影響で会社も慌ただしくなり…当時の体調では復帰が難しいと感じ、退職しました。

ただ、退職後も心が休まる時間はありませんでした。一人で家にいて、まるで自分だけが成長していないような焦りを感じ、孤独感に押しつぶされそうな日々を過ごしていたんです

リヴァトレを通じて、双極症と向き合えるように

──退職後、前職の上司が立ち上げた「リヴァトレ」(当時の名称:オムソーリ)の利用を始めたそうですが、双極症との向き合い方は変わりましたか?

※「リヴァトレ」とは、株式会社リヴァが運営する、うつ病や双極症など精神疾患でお悩みの方が復職・再就職のためにトレーニングをおこなうリワークサービスのこと。うつ病などのメンタルヘルス不調で休職した方の職場・社会復帰を支援するプログラムを指し、再発を防ぐための様々なプログラムが用意されています。

 

前職の上司である、現リヴァ代表の伊藤に声をかけてもらい、2011年6月に「リヴァトレ」の利用を始めました。そこで、双極症の方に初めて出会えたことは、自分の症状と向き合えるようになった大きなきっかけとなりましたね

軽躁状態の利用者さんが活発に発言したり、他の利用者さんとコミュニケーションを取っている様子を間近で見て、「自分も同じように行動することがある」と気づいたんです。

また、「躁状態で気分が高まっているうちに、全力で活動すること」を辞めるようにしました。支援員のサポートもあり、極端に躁転、うつ転しないよう気分の波をコントロールする方法を学べたんです。

リヴァトレの利用前は、何も対処せずに軽躁からうつになると1ヶ月は動けなかったのが、軽躁を抑えるよう生活することで、うつの期間も短くなり、徐々にコントロールできている感覚を持てて、前進できているような気持ちになりました

 

──リヴァトレではたくさんのプログラム(社会復帰に向けたトレーニング)に参加できますよね。特に良い影響を受けた取り組みはありましたか?

「マネジャーゲーム」と「農作業」ですね。

「マネジャーゲーム」はグループワークです。マネジャー役の利用者さんには、事前に誰よりも多くの情報が渡され、部下役の利用者さんに指示を出し、決められたゴールに向かってゲーム上の「仕事」を進めていきます。

私はマネジャー役を担う中で一人で「仕事」を抱え込みすぎ、パンクしてしまう傾向にあることが分かりました

また、振り返りの際に「部下役を頼ってほしかった」とグループのメンバーに言われたことで、「人を頼ることは迷惑なことではない」と痛感したのも、大きな気づきでしたね。

「農作業」では、「生きる感覚」を知ることができました。自然の中で目一杯空気を吸いながら雑草を抜き、徐々に畑が綺麗になるのを目にして、作業の成果を直に感じることができる。

また、肉体的な疲労感が生まれるからこそ、食事が美味しく感じられたり、よく眠れたり。「五感を存分に働かせて過ごすことこそ、『人間として生きる』ってことだよな」と痛感したんです

在職時に担っていたデスクワークも好きですが、全身を使うことはなく、成果は通帳に印字された手取り額で感じる。それだけでは生きている実感が湧きづらいのだなと思いました。

農作業プログラムに参加する、リヴァトレ利用者時代の松浦

そして2012年の2月から、縁があり元利用者として初めて、リヴァの社員になりました

気分の波はありますが、健康的に働き続けられるよう、リヴァトレのプログラムでの学びや経験を活かして対処しています。休職は一度もしていません

新著に込められた想い

──新著を通じて、どのようなことを感じてもらいたいですか?

双極症の完治を目指すのではなく、自分に合うかたちで「付き合っていく」という感覚を持ってもらえると嬉しいです

私も初めは完治させて仕事をしたいという気持ちが強く、生まれた焦りが症状を悪化させてしまうこともありました。しかし今は、症状があることを前提に、どう対処すれば気分の波を穏やかにして、働き続けられるか考えながら過ごしています。

どの対処法が合うか合わないかは人によって異なります。『ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法』の中でも、いくつかの事例や症状を書いていますが、全部が当てはまる人はいないでしょう。

1つでも参考になる部分があれば良いと思っています。

 

──最後に読者にむけてメッセージをお願いします!

正直、症状が重いときは、活字を読むこと自体つらいと思います。『ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法』にはマンガも収録されているので、そこだけでも見ていただければ。

また、双極症と向き合いながら働くヒントを発信するWebメディア「双極はたらくラボ」やYouTubeチャンネルなど、書籍以外にもさまざまなメディアを持っています。

働くヒントを見つけるための選択肢として、書籍だけではない自分に合う方法を試していただけると良いですね

双極症でも働き続けるヒントが見つかる!新著のご紹介

『ちょっとのコツでうまくいく! 躁うつの波と付き合いながら働く方法』が2024年9月27日より発売となりました。

双極症と向き合いながら働くヒントが詰まった一冊になっています。

  • 著者:松浦秀俊(双極はたらくラボ編集長)
  • 監修:高江洲義和(琉球大学大学院医学研究科精神病態医学講座教授)
  • 発売日:2024年9月27日(金)
  • 価格:1,760円(税込)
  • 出版社: 秀和システム

 

▼書籍の購入はこちらから!(Amazon)
https://amzn.asia/d/eFLzPW5

双極症の方の力になる! リヴァトレとは?

松浦が社会復帰のために利用していた「リヴァトレ」は、双極症をはじめとするメンタルヘルス不調の方に向けた「リワーク」サービスです。

スポーツ選手が怪我をした際にリハビリが不可欠なように、メンタルヘルス不調によって仕事を離れた方の「社会復帰へのリハビリ」として必要なのが「リワーク」です。

リヴァトレは都内4か所・仙台・大阪に拠点を構え、これまで1,600名を超える方々の復帰をサポートしてきました。双極症の方に向けたプログラムも多数用意しており、同じ悩みを持つ方々と一緒に学べる環境が整っています。

例えば、躁状態やうつ状態のサインを整理し、それぞれの状態に合った対処法を見つけるプログラム。「フラットな気分とはどういう状態だろう」「軽躁やうつの症状が出始めたことにどう気づけるのか」など、同じ双極症を持つ方々と話しながら、共感や疑問の解決につながるヒントが見つかる対話プログラム。知識の習得だけではなく、互いに体験を共有しながら自己理解を深められる点がリヴァトレの特長です。

無料で資料請求や、施設の雰囲気がわかる見学・体験会を随時開催していますので、ぜひ気軽にお申し込みください。

まずは無料パンフレットをご覧ください

リヴァトレは、うつなどのメンタル不調でお悩みの方の復職・再就職をサポートするリワークサービスです。

復帰に向けて行う取り組みについて、無料パンフレットでわかりやすくご紹介しています。

まずはお気軽にお申込みください。

※実際の支援スタッフへのご相談、事業所のご見学はこちらから

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この記事を書いた人
涌井 陽 株式会社リヴァ

株式会社リヴァ 2022年度入社
1998年生まれ。早稲田大学文学部を卒業後、新卒でリヴァへ入社。LIVA MAGAのライターを担いながら、採用や経理業務に従事。好きなことは旅行やコーヒー、カメラ。

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