うつの急性期を過ぎ、少しずつ体調が安定してくると休職中の過ごし方について迷われる方もいるのではないでしょうか。
メンタル不調が回復してきて、復帰に向けて動き出したいという方におすすめなのが、「生活記録表」をつけてみることです。今回の記事では、生活記録表のメリットや記録をつける上でのポイントなどをご紹介していきます。
復職判断にも活用できるため、職場で休職者がいる人事担当者の方にもおすすめの内容です。
▼本記事の内容は下記【脱うつCh】でも動画で解説しています。
目次
生活記録表の役割とは?
うつや適応障害などのメンタルヘルスの不調は、復職後の疾病再発率が高い疾病です。だからこそ再発防止のためには、休職期間中をどのように過ごすかが重要だと言われています。
休職中の過ごし方を考えていくために最適なツールとして、生活記録表があります。
生活記録表とは、1日の自分の活動を記録したシートのことです。
- 1日の時間の使い方
- 睡眠の質と量の評価
- 疲労感・意欲・活動量の評価
- その日気になったこと
- 1週間の振り返り
- 主治医に聞きたい事
といった項目を記録することで、自身の状況を客観的に振り返ることができます。
生活記録表を活用することで、復職準備や生活リズム改善などに役立てることができます。メリットについて、以下の章で解説します。
ただし心の状態によっては、生活記録をつけること自体の負担が大きい場合もあります。ご自身の中でも負担が大きそうで記録をつけても良いか迷う際は、まずは主治医に相談してみてください。
休職中に生活記録表をつけるメリットとは?
メリット①:復職判断の資料として活用できる
主治医や人事担当者と話す際に、生活リズムについて口頭で説明するのは難しいと感じたことはありませんか?
そういった場面では、生活記録表を共有することで、自分の状況を客観的に伝えやすくなります。
例えば主治医に復職の診断書を発行してもらうことになった場合。生活記録表をもとに復帰に向けて体調がどのくらい安定してきたかを具体的に話し合うことができれば、より適切な復職可否の判断をしてもらえるのではないでしょうか。
産業医や人事担当者などの会社側の目線でも、休職者が実際の勤務時間と同じスケジュールに耐えられるかどうかを客観的に判断しやすくなり、復帰のタイミングを検討しやすくなります。
会社がどう支援していくかの参考にもできますので、自分の状態を伝えるのが苦手な方や正しく情報を伝えたいという方は作成してみると良いでしょう。
産業医目線での復職判定のポイントをまとめた記事もありますので、記録をつける際の参考にしてみてください。
メリット②:生活リズムの悩みを解決するヒントになる
1日の過ごし方を記録してみると、食事の回数や睡眠時間のばらつきなど…自分のこととはいえ、無意識な傾向に気づくケースがあります。
例えば、夜なかなか寝付けないとお悩みの方なら、寝る前にどんな行動をしていたかを振り返ってみるのもよいでしょう。
「いつも寝る直前にこういう行動をしているな」や「夕食を摂るのが遅い日は布団に入る時間も遅くなる傾向にあるかも」など、悩みを解決するヒントが見えてくるかもしれません。
また、真面目で責任感の強い方ほど、自分の課題や改善点に目が向きがちになります。
生活記録をつけることで「回復していないと思っていたけど、1週間に1回は調子がよい日があるな」と自分の回復具合に気づくことができたり、上手くいった取り組みを見つけやすくなるのもポイントです。
日中の過ごし方については、認知行動療法の一つである行動活性化療法の考え方も参考になります。関連の記事もありますので、興味のある方はこちらを参考にしてみてください。
メリット③:生活リズムを整えることへの意識が高まる
生活記録表は、復職後の生活リズムをシミュレーションするのにも活用できます。
例えば「復帰後は朝7時に起きて夜23時に寝る生活が理想」であれば、理想の時間にあらかじめ目印を付けてみましょう。理想の時間に対してあとどれくらいギャップがあるのかをわかりやすく可視化することができます。
理想が明確になると、そこへ向けて何が必要かも洗い出しやすくなりますし、自分がまず何から取り組めばよいかも考えやすくなるでしょう。
ただ、ギャップは一気に埋めようとしても、なかなか上手く行かないことが多いです。大きな理想を書き出したら、それに向けて、まずはすぐ出来そうな小さなゴールから設定して取り組んでいきましょう。
生活記録表を上手く活用するための記入項目とは?
様々なメリットのある生活記録表。記録を行う上で、実際にどのような項目を記入すると良いのでしょうか。
具体的な記入項目と押さえておきたいポイントをご紹介していきます。できそうな方は、ぜひ下記リンクからダウンロードして一緒に書いてみてください◎
①1日の時間の使い方を記録
まずは、自分がその1日をどのように過ごしていたか記入していきましょう。
生活記録表のフォーマットは1時間おきに表が区切られているので、過ごしていた時間の分だけ色で塗りつぶしていきます。1時間未満の行動を記録する場合は、記号を使って記入してみるのもよいでしょう。
記入例では、睡眠時間を黄色、外出した時間をオレンジ色で塗りつぶし、食事を★マーク、服薬を●マーク、入浴を「入」と記載しています。
こうすることで1日のうち、どの行動にどれくらいの時間を使ったか、また睡眠や食事をいつ摂ったのか等が一目でわかるようになります。
人によっては気圧の変化など、天候と体調が密接に関わっている場合もあります。可能ならその日の天気も書いておけると、体調への影響に気づけるかもしれません。
②睡眠の量と質、疲労感、意欲、活動量の評価
日中の過ごし方を記録したら、睡眠に関する項目も記入してみましょう。睡眠のお悩みがある方は特につけておきたい項目です。
睡眠時間に加えて、睡眠の質を「良い・普通・悪い」の3段階で、疲労感、意欲、活動量を「1~5の5段階評価」で記載します。
毎日継続して記録を続けることで、1週間や1か月単位での変化を把握することができます。数値をもとに自分でグラフ化してみるのもよいでしょう。
後から振り返ったときに自分の睡眠時間や意欲がいつ頃からどのくらい変化してきたか、確認するための資料としても使えます。
双極症をお持ちの方であれば、この意欲や活動量の数値の変化を見ることで、症状の変わり目が捉えやすくなるといった使い方もできます。
③調子が良くなったきっかけや行動、気になったことを記録
備考欄には、「①調子が良くなるキッカケ、行動」、「②1日の感想や薬の副作用、気になることなど」を記載します。
自分の調子が良くなるきっかけや行動を知ることは、体調の回復に大いに役立ちます。また、薬の副作用やその他気になることも、主治医や周囲に相談するための材料になるかもしれません。
ただ、「たくさん書こう!」と意気込んでしまうと記録をつけ続けること自体が大変になってしまいます。自分が無理せずに続けられるくらいの文章量で書いてみてください。
④1週間の振り返り
1週間分の生活記録をつけたら、その週を振り返り、気づいたことを記録します。
「週に3回中途覚醒している日があるな」や「湯船につかった翌日はスッキリ起きれていることが多いかも」というように、これまでつけた記録を客観的に分析してみると良いでしょう。
もちろん、1週間の中で書けなかった日があっても大丈夫です。書けなかった日の自分を責めるのではなく、「書けなかった理由を知ることができた」と捉えてその理由を記録しておくことで、後から役に立つ可能性があります。
その他にも、次週へ向けて目標や取り組んでみたいことなども書いておけると、モチベーションの維持に繋がるかもしれません。
⑤主治医への質問事項
こちらは一週間を過ごしてみて医師と共有したい事項を書く欄として使ってください。
もちろん医師だけでなく、産業医や職場の人事担当者などへ向けた内容を書いていただいても大丈夫です。
大切なのは、自分に合った方法で続けること
ここまでフォーマットをもとにご説明してきましたが、生活記録表を作成するにあたって、手帳やスマートフォン、スマートウォッチ等の記録も参考になります。
人によっては記入項目を自分で増やしてカスタマイズしたり、気分スコアをグラフにしたりして活用している方もいらっしゃいます。
日々の記録を続けることは本当にすごいことです。仮に書けなかった日があったとしても焦らずに、「手書きの方が書きやすい」「データで入力する方がよい」など、どうやったら続けられそうか?という目線で自分に合った方法を探してみてくださいね。
生活リズム改善にはリワークも効果的
職場復帰に向けた生活リズム改善には、リワークサービスを活用するのもおすすめです。
リワークとは、「Re-Work(再び働く)」を意味しており、うつ病や適応障害など、精神面の不調からある程度まで回復したメンタルヘルス不調者を対象に、職場・社会復帰の準備をするプログラムのことです。
リヴァでも、復職・再就職支援サービス「リヴァトレ」を提供しています。職場へ通勤するようにセンターへ通いながら復帰に向けたトレーニングをするため、生活リズムの改善に役立ちます。
対人コミュニケーションやストレス対処法など、利用者の特性や体調に合わせた様々なプログラムが用意されており、「自分らしい働き方」を見つめ直すことができるのも大きな特長です。
リヴァトレでは、センターの無料見学・体験も可能で、無料で資料請求もできますので、ぜひご覧ください。
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復職・再就職コーディネーター
鹿児島県生まれ。高齢者介護や求人広告のライターなどの仕事を経て、2023年にリヴァへ入社。生活訓練施設「リヴァトレ高田馬場」にて、プログラム提供に携わる。自分らしく感じる瞬間は「何気ない日常の中にワクワクを見つけられた時」。