子育てには楽しいことももちろんあると思いますが、一方で大変なこともたくさんあるのではないでしょうか。子育てを頑張っているものの疲れてしまったと感じることや、育児うつかもしれないと自分自身の状態を疑ったことがある方もいると思います。
この記事では、特に女性に多い育児うつについて、症状やその対処法、また子育てをサポートしてくれる機関などについてご紹介します。
目次
約80%超の母親が育児ストレスを感じている現状
育児うつの話に入る前に、まずは日本国内における育児のストレス状況に関するデータをご紹介します。
育児でうまくいかないことが続くと、「育児を楽しめず、むしろストレスに感じている母親は自分だけなのでは…」と不安になることもあるでしょう。しかし、オウチーノ総研が行った20歳〜45歳の子育てを行っている男女を対象した調査から、育児ストレスを感じている女性は約80%超にものぼることが明らかになっており、男性でも60%近くが育児ストレスを感じているという結果となっています。
さらに、育児ストレスを感じている女性の中で「些細なことで子どもに怒鳴ってしまった」と回答している人は57.4%おり、半数以上にのぼります。育児をしている母親たちも一人の人間ですから、育児にストレスを感じることや子どもに当たってしまうことがあるのは決して自分だけではありません。
育児うつの症状かも?
子育てに疲れてしまった時のセルフチェック項目
それでは育児うつの話に入ります。子育てに疲れて「育児うつかもしれない」と思ったら、まずはうつの症状”に当てはまるかどうか、セルフチェックをしてみましょう。
- 悲しい気持ち、憂鬱な気分、沈んだ気分である
- 何事にも興味が湧かず、楽しくない
- 疲れやすく、元気がでない
- 気力や意欲がなく、集中できない感じがする
- 眠ろうとしても寝付けず、朝は早く目が覚めてしまう
- 食欲がわかない
- 友だちや家族など人に会いたくないと感じる
- 夕方よりも朝方の方が気分、調子が悪い
- 心配事が頭から離れない
- 失敗や悲しみ、失望から立ち直れない
- 自分を責めたり自分には価値がないと感じたりする
(引用:厚生労働省 うつを知る)
育児中に、上記症状の多くが一日中存在し、かつ2週間以上継続している場合には育児ストレスによるうつ症状があるかもしれません。
育児うつ、産後うつ病、マタニティブルーズの違いは?
そもそも「育児うつ」とは、どういった症状のことを差すのでしょうか。類似するものとして「産後うつ病」「マタニティーブルーズ」といったものもあるので、併せてご紹介します。
育児うつとは
医学的に明確な定義があるわけではありませんが、育児に関連する様々な要因が絡み合いストレスとなることで発症するうつ病のことを育児うつと呼ぶことがあります。産後うつと比較すると、”子どもが大きくなっても起こりうる”という点で異なります。
産後うつ病とは
産後うつとは、分娩後1,2週間から数ヶ月以内に発症し、抑うつ症状が2週間以上、長ければ1年以上継続し日常生活に支障をきたす状態のことです。分娩後の女性の10%~15%が経験するとされています。
マタニティブルーズとは
マタニティブルーズとは、分娩後10日以内に現れて2週間程度で改善がみられる、涙もろくなる、気分が不安定になる等の抑うつ症状のことを言います。分娩後の女性の30%~50%が経験すると言われています。マタニティブルーズが長引く場合、産後うつ病に移行することがありますので、症状が2週間を超えて続くようなときは相談が必要です。
私が悪いのかな…
育児うつの原因とは?
子育てや育児がうまくいかない時、自己嫌悪になる方は多いのではないでしょうか。そんな中、育児うつになると更に否定的な考えから離れられなくなってしまうこともあるかもしれません。しかし、実際のところ、育児うつの原因はどこにあるのでしょうか。原因がわかるだけでも漠然とした不安感を拭えるかもしれません。ここでは育児うつの原因と代表的なものをご紹介します。
身体的ストレス
妊娠・出産したあとの身体はホルモンバランスが大きく変化するため、ストレスに対して敏感になるとともに対処する機能も弱くなります。また、子どもへの授乳や夜泣きがあると十分な睡眠時間と睡眠の質を確保することが難しくなります。それに加えて家事や仕事を行わなければならない場合、母親の身体は疲れてしまい育児うつ・産後うつの要因となってしまいます。
心理的ストレス
今は育児書やSNSなどで様々な情報を見ることができます。SNSの情報やママ友の話から、自分の子どもの成長具合と比較して自分の育児が劣っていると感じてしまうこともあるかもしれません。お子さんにはそれぞれ個性があります。繊細な子、活発な子、おしゃべりな子、あまり食べない子…。病気や障害があって特別なケアが必要なお子さんもおられます。そんな中、子どもの成長を人と比べたり、育児書等に沿って完璧にこなそうとすると、頑張りすぎて疲れてしまうこともあります。
頼れる人がいない環境
夫からの育児への理解や協力を得られない場合や、物理的な距離の遠さや家族関係の問題により実家を頼ることができない場合、近所に頼れる友だちがおらず社会的に孤立状態にある場合など、育児に孤軍奮闘している母親もいるのではないでしょうか。このような育児を取り巻く様々な環境が母親にとってサポーティブなものではないことが大きなストレスとなり育児うつの要因となることもあります。
以上、代表的な3つの原因を挙げました。育児うつの原因は1つではなく様々であり、さらにそれぞれが絡み合うことで母親の肉体的・精神的な負担はより大きいものとなり、育児うつに至ってしまうことがあるのです。
すぐに試せる育児うつ対処法
育児うつにならないために、また、もし育児うつかもしれないと思うほど辛くなってしまったらどうしたら良いでしょうか。具体的な対処方法についてお伝えします。
しっかり睡眠を取る
心と身体の疲れを取るためには十分な睡眠を取ることが大切です。毎日は難しくても睡眠をしっかり取れる日や時間帯を作りましょう。信頼できる誰かに少しの時間子どもを任せて、安心して眠れる状況を作れると良いですが、夫や双方の両親に協力をられない場合は子どもの成長に応じて、公的なサービスや民間のシッターなども活用してみることをお勧めします。公的なサービスについては後述します。
比較しない、完璧を目指さない
子どもにはそれぞれ成長のペースがあります。完璧な子育てや家事などもありません。部屋が散らかっているのに掃除ができない日があっても、食事を作れなくて出来合いのものを買ってくる日があっても、決して悪いことではありません。それによって母親に時間ができて心のゆとりができるのであれば、子どもにとっても良いことです。諸条件が違うとはいえ、他のご家庭と比較してしまうこともあるかと思いますが、自分で自分を追い詰めず、今日できた育児や家事を自分で褒めてあげましょう。「この子はこの子のペースで成長していく」「自分は自分で良いんだ」と考えてみてはいかがでしょうか。
一人で抱え込まずに誰かに話す、悩みを相談する
子育てをストレスに感じて一人で考え出すと、どんどんネガティブな方向に思考が行ってしまい、自分自身を責めることもあるでしょう。日々のちょっとした負担に感じていることであっても、夫や実家、友だちなど信頼できる人に話すことで気持ちが楽になるかもしれません。相談された相手にとってみても、あなたが話してくれたことは嬉しかったりするものですし、誰かに話すことで、ご自身の考えが整理されたり、自分だけでは考えもしなかったような発想や視点を得ることができるかもしれません。
自分が楽しめる時間を作る
子どもが幼ければ幼いほど、24時間付きっきりの状態で育児をしなければならないような気持ちや環境になってしまいますよね。そんな中だからこそ、信頼できる人に子どもを任せて、母親自身が一人で好きなことややりたいことができる時間をあえて確保しましょう。後述する子育てサポート期間に頼るのも良いでしょう。母親が楽しめる時間を作ってリフレッシュすることは心のゆとりに繋がるため、子育てでも大切なことです。
育児うつになった場合の子どもへの伝え方や対応
育児うつになり、生活環境への影響や子どもへの態度などが表立ってきた場合、子どもの理解力によっては伝えるかどうか迷うかもしれません。しかし、子どもは母親や家族の変化にとても敏感なため、伝えないでいると何が起きているのかわからず不安に感じてしまいます。そのため、育児うつになった場合はできる限り育児うつであるということを伝えた方がいいでしょう。その際、どのような状況でどのように伝えたら良いかについて具体的にお伝えします。
話をするための落ち着いた状況を作って伝える
母親が病気(育児うつ)であるということを伝えることは、母親にとっても子どもにとっても大切なことです。落ち着いた環境を選ぶことに加え、子どもが精神的に落ち着いている時を選び、他のことをしながらではなく母親と子どもでお話をするための時間として場を設定しましょう。また、伝える時間は子どもの集中力にもよりますが、5分~10分程度とできるだけ短い時間が良いでしょう。
子どものせいではないことを伝える
育児うつの影響で、例えば掃除ができなかったり食事を作れなかったり、朝起きれなかったりすると、「ママに嫌われたのかもしれない」「自分のせいかもしれない」と子どもは自分に関連させて状況を理解することがあります。そのため、明確に「あなたのせいではないよ」ということを伝えましょう。その上で「病気になってしまったからなんだよ」と病気のせいであることも伝えましょう。
良くなるように治療を頑張っていることを伝える
病気にはなったけれども、良くなって今よりもっと一緒に楽しく過ごせるようにママが治療を頑張っていることを伝えましょう。治療をすることで良くなるものだと子ども伝えることで、少しでも安心させてあげましょう。
不安や心配な気持ちをいつでも話して良いと伝える
子どもはママが病気であることを聞いて自分のせいではないと伝えられたとしても、ママのことを気にかけて心配をかけないようにとたくさんの我慢をしてしまいます。そのため、ママの病気のことで不安や心配が広がってしまっても、気を遣って聞かないようにしてしまうことがあります。ママのことで不安になることがあったら、いつでも話してほしいと伝えておきましょう。
話したあとに子どもの好きなことを一緒にして過ごす
大切な話を伝えたあとは、子どもが好きなゲームやDVDを使って、子どもにとって安心できる時間を一緒に過ごすと良いでしょう。
このように、子どもと話をする時間は一度で終わりではありません。引き続き子どもの様子を見て話す時間を取ることが大切です。子どもが良い子で無理をしているように感じたり、ご自身の体調が良くなったり状況が変わったりしたら、それを伝える時間を確保して子どもを少しでも安心させてあげることが大切です。
子育てをサポートしてくれる機関
夫や実家の協力が得られない場合や、身近に相談できる人がいない場合には、子育てをサポートしてくれる機関を活用しましょう。
ファミリー・サポート・センター
ファミリー・サポート・センターは、厚生労働省の事業のもと市区町村に設置されている地域で子育てを支え合う会員制のサービスです。保育施設への送り迎えをしてくれたり、保育時間外や放課後に子どもを預かってくれたりします。仕事復帰している母親や、夫や実家の協力が得にくい母親にとっては強い味方になってくれるかもしれません。
児童館
児童館は、都道府県や指定都市、社会福祉法人等によって運営されている施設です。子どもを遊ばせるだけでなく子育てに関する相談を行うこともできますし、子どもを連れてきている地域の母親と友だちになるチャンスにもなります。自宅近くにある児童館をぜひ調べてみてください。
お住まいの市区町村の相談窓口
お住いの市区町村にも相談窓口があります。地域の子育てに関する情報が必要な時は問い合わせてみることもおススメです。東京都の場合だと、全ての子どもと子育て家庭を支援する区市町村の相談窓口として子ども家庭支援センターが設置されていたりします。育児相談、養護相談等の相談や、ショートステイや一時預かりといった子育てサービスの窓口にもなっています。
また、東京都には子育てをしている人向けの行政サービスや子育て支援団体に関する情報を発信するサイトも開設されています(https://kosodateswitch.jp/)。東京都にお住まいでなくても、お住まいの地域に子どもの子育てに関する相談窓口や情報提供先がないか探してみることをおすすめします。
育児うつと思ったら
育児うつ・産後うつかもしれないと思ったら、我慢をせずに家族や友人、専門家、子育てサポートの機関へ相談しましょう。ママが頑張って無理をしてしまうと、子どももそんなママを見て頑張って無理をしてしまうかもしれません。ママが元気になることは、子どもにとって嬉しいことです。ご自身が今以上につらくならないためにも、子どものためにも、早めに相談してみてはいかがでしょうか。
リヴァで行っているサービスについて
リヴァでは「リヴァトレ」という職場復帰支援(リワーク)を行っており、職場へ通勤するようにセンターへ通いながら、よりよい復職・再就職を目指すトレーニングをすることができます。
主治医から復職の許可が下りても、すぐに職場に復帰したり、あるいは就職活動をするのは不安であったり難しく感じられる方もいるでしょう。体調が回復し今後の生活やキャリアについて考える余裕が生まれた段階で、一度相談してみるのはいかがでしょうか。
また、センターへは週2日から通所可能なので、完全に回復していない方でも少しずつトレーニングをすることができます。
特に以下の方にお勧めです。
- 働くための生活リズムを整えたい方
- 服薬と休養以外のストレス対処法を身に付けたい方
- 職場で働く力の回復・向上を目指したい方
- 働き方・生き方の再構築をしたい方
センターの無料見学・体験も可能です。また『よくある質問』についてもまとめておりますので、ご参考ください。
(参考:リヴァトレ よくあるご質問)
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精神保健福祉センター、精神科クリニック、精神科病院での勤務を経て、2019年に株式会社リヴァに入社。就労移行支援施設「リヴァトレ仙台」にて、心理系プログラムを中心にサービス提供を行っている。