季節の変わり目とうつ病の関係ってあるのだろうか?と疑問に思ったことがある方は意外といるのではないでしょうか。少なくとも「冬季うつ病」などの言葉を聞いたことがある方はそういった疑問を抱いたことがあるでしょう。
今回は、季節の変わり目にみられやすい季節性感情障害(SAD)についてお伝えします。
目次
季節の変わり目はうつ病になりやすいって本当?
「季節の変わり目だから体調崩さないように」といった言葉をよく耳にしますよね。気候や気圧の変化に敏感に反応して体の調子を崩すことがあるように、心も影響を受けることがあります。
春から夏、夏から秋、秋から冬、冬から春という季節の変わり目にのみ生じる一時的な抑うつ気分や意欲の低下は、心が季節の変化についていけないことによって生じている可能性があります。しかし、その症状がもし毎年特定の時期に、一定期間生じており、生活に支障が出ているということであれば、それは季節性感情障害(SAD)の可能性が疑われるかもしれません。
それでは季節の変わり目に発生しやすい季節性感情障害(SAD)について、詳しくみていきましょう。
夏季うつ病?冬季うつ病?…季節性感情障害(SAD)とは
季節性感情障害(Seasonal Affective Disorder:SAD)とは、季節の変わり目など、特定の季節が原因となって繰り返されるうつ病のことであり、更に細分化すると、”夏季うつ病”と”冬季うつ病”があります。非季節性のうつ病(注1)と共通する症状もありますが、季節性感情障害(SAD)特有の症状もあります。
注1:非季節性のうつ病とは、季節に関わらずおこるうつ病で、心理社会的なストレスが要因と考えられるもの。後ほど触れる五月病など、季節そのものではなく、季節に関連した行事や出来事がストレスでおこるうつ病のこと
夏季うつ病
夏季うつ病は、6月〜9月の暑い時期に生じます。食欲不振や不眠、気分の落ち込み、不安などの症状が現れます。夏バテと似た症状と言われていますが、気分の落ち込みや不安といった精神症状があることによって、夏バテとは鑑別されます。暑さが落ち着いてくる秋になると改善します。
冬季うつ病
冬季うつ病は、10月〜3月の秋から冬にかけて症状が現れ、春先に症状が改善するものです。抑うつ気分や意欲の低下は非季節性のうつ病と同様ですが、特徴としては、しばしば過眠や過食の傾向が強く現れると言われています。「過眠」の症状では、夜眠る時間が長くなるだけでなく日中に眠気を感じるようになります。「過食」の症状では、パンやパスタ、チョコレートなどの糖質を多く含む食品の摂取量が増加します。過眠で活動量が低下し、過食で摂取カロリーが増加することから、体重が増加することがあります
余談:五月病は季節性感情障害(SAD)ではない?
五月病はそもそも医学的に認められている病名ではなく、季節が直接の原因となって生じるものではありません。季節の変わり目にみられやすい季節性感情障害(SAD)は季節が原因ですが、五月病の原因は季節というよりは環境の変化にあると考えられます。新年度である4月に新しい環境に入り、場や対人関係に適応しようと一生懸命に過ごしたのちに5月の連休を迎え、連休明けに体調不良や意欲の低下などから学校や会社に通うことができなくなってしまう状態です。
季節性感情障害(SAD)が起きる原因について
季節の変わり目でみられやすい季節性感情障害(SAD)は、季節のどのような要素が原因として考えられているのでしょうか。まだまだ実際には原因が判明していないことも多い季節性感情障害(SAD)ですが、その中でも夏季うつ病と冬季うつ病それぞれの原因と考えられている内容についてお伝えします。
夏季うつ病の原因
1.日光の浴びすぎ
夏だからこそ海やプールにでかけたりBBQをしたりと、外で楽しい時間を過ごすこともあると思います。また、夏場はこういったことをしなくても通勤や通学などで強い日差し浴びてしまうこともありますね。このように強い日光を浴びすぎると体力を消耗し、強い疲労感が生じ、夏季うつ病発症の原因と言われています。
2.部屋の温度や湿度の設定
節電や冷えが気になってかなり暑いのに我慢して冷房を入れないで過ごそうとする場合や、逆に冷房をきかせすぎてしまっている場合などが挙げられます。人間には活動する時に働く交感神経とリラックスした状態で働く副交感神経の2つの自律神経がバランスを取って機能しています。しかし温度や湿度が身体にあっていない状況や冷えた部屋と暑い外など、気温差がある場所を行き来する状況では、自律神経のバランスが乱れてしまい、夏季うつ病発症の原因となる可能性があります。
3.栄養の偏り
暑いときには食欲が低下し、冷たいものやサラッと食べやすいものばかりを食べてしまうことがあると思います。しかしこういった食生活が続くと栄養に偏りが生じ、夏季うつ病の引き金となってしまいます。
冬季うつ病の原因
1.日照時間の減少
冬季うつ病の原因は、日照時間が減少することであると言われています。日照時間が短くなるということは、日を浴びる時間が短くなるということです。日を浴びる時間が短くなると、セロトニン(注2)という神経伝達物質(注3)の分泌が抑制されたり、メラトニン(注4)という神経伝達物質の分泌が増加したりします。セロトニンの分泌量が低下することにより抑うつ症状が生じ、メラトニンの分泌量が増加することにより過眠が生じます。日照時間の短い地域に引っ越したことや、日当たりの悪い部屋に引っ越したことによって、冬季うつ病となることもあります。
注2:セロトニンとは脳内で働く神経伝達物質のひとつ。感情や気分のコントロール、精神の安定に関わる
注3:人間の身体の機能が働くには細胞から細胞へ情報を届ける必要があり、それらを運ぶために行き来するのが神経伝達物質である
注4:メラトニンは別名「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、覚醒と睡眠を切り替えて、自然な眠りを誘う作用があるホルモンの一種
季節性感情障害(SAD)の対策や治療方法は?
原因がわかったところで、季節性感情障害(SAD)にならないための対策と、罹患した場合の治療方法についてお伝えします。
夏季うつ病の対策と治療法
1.日光を浴びすぎないようにする
通勤や通学など不可避な場合は日傘や帽子を活用して直射日光を避けるようにしましょう。また、極力日陰を歩くことも対策になります。海やプール、BBQといった夏だからこそ楽しみたいこともあると思いますが、連日強い日差しを浴びることは控えましょう。
2.快適な室温・湿度に設定する
暑いときの室温・湿度の管理として窓をあけたり扇風機を用いたりすることも1つの方法です。しかしそれでもなお暑いと感じる場合は、我慢せず冷房を用いましょう。職場では自分に合った室温や湿度に設定することはなかなか難しいと思うので、寒く感じた時に備えて羽織れるものを持参しておくことも大切です。自分の体感を大事にし、暑くも寒くもない程よい状態でいられるようにしましょう。
3.栄養バランスの良い食事を心がける
冷たいものや食欲のないときでも食べられるものだけを連日摂っていては栄養が偏ってしまいます。たんぱく質、脂質、炭水化物を意識的にバランス良く摂取するようにしましょう。
冬季うつ病の対策と治療法
1.日光を浴びる
冬季うつ病の原因は、日照時間が短いことであるとお伝えしました。起床したらまずカーテンをあけて日の光を浴びるようにしましょう。また、短い日照時間であっても日が出ている時間にできるだけ外出すると良いでしょう。
2.適度な運動をする
一番良いのは日が出ている時間帯に外に出て少し身体を動かすことです。日を浴びることに加えて軽い運動をすることによって、低下してしまったセロトニンの分泌を増やすこともできます。
3.栄養バランスの良い食事を心掛ける
栄養バランスの良い食事をまずは心掛けましょう。特に、魚、肉、大豆製品、ナッツ、バナナなどはお薦めです。というのも、元気な気持ちに関わるセロトニンや眠りに関わるメラトニンの原料に「トリプトファン(注5)」という必須アミノ酸があるのですが。そのトリプトファンは体内で作り出すことができないため食品から摂取しなければなりません。
注5:トリプトファンとは、人の健康維持にとって欠かせない物質であり、ヒトの体内では十分量が合成出来ない必須アミノ酸のこと
4.高照度光療法を行う
日光を浴び、適度な運動を行い、栄養バランスの良い食事を摂ることがまずは大切です。それらを行っているにも関わらず状態が改善しない場合には、高照度光療法を行うことがあります。この治療法は、毎朝30分〜1時間程度、高照度器具を用いて光を浴びるという方法です。1週間程度で治療効果が出ると言われていますが、やめると症状が再発する可能性があるため冬季の間は使い続けると効果があると言われています。
まずは生活習慣の改善を
自律神経の乱れを避けるため、まずは急な気温変化への対策や生活習慣の改善を行いましょう。そして、十分な時間と質を伴った睡眠を取るために就寝前にスマホやパソコンを使って脳を刺激してしまうような行動を避けましょう。生活習慣を正す・改善するという点では、リワーク施設などを活用するのも効果的です。
また、前述の治療で効果が感じられない場合には、非季節性のうつ病と同様に抗うつ薬を用いることもあります。継続的な服用が必要になるので主治医としっかりと相談しましょう。
季節性感情障害(SAD)にかかりやすい人の特徴は?
季節性感情障害(SAD)のかかりやすさには性別による差があります。一般に男性よりも女性のほうがかかりやすいと言われています。女性の身体はホルモンバランスによる体調の乱れが生じやすく、温度や湿度の影響を受けやすいためであると考えられています。
春夏秋冬、最もうつ気味になりやすいのはどの季節?
前述したように、夏季うつ病にかかりやすい時期は6月〜9月頃の日差しが強くなる時期です。暑くなってくると抑うつ症状が出る傾向にある方は、5月であっても日差しの強さを感じるようになったら日差しを浴びすぎないように注意するようにしましょう。
冬季うつ病は日照時間が短くなる10月〜3月頃にかかりやすいです。秋から冬の時期になると抑うつ症状が出る傾向がある方は、日が短くなってきたように感じたら意識的に日を浴びるようにしましょう。
ご自身が調子が良かったり、安定しやすい季節や気候があれば、その時のご自身の状態を基準として、季節により波があるかを意識してみると良いかも知れません。
季節性感情障害(SAD)の早期発見ポイントや予防方法はある?
季節性感情障害(SAD)と一般的なうつ病の違いは、原因にあると前述しました。明確な環境ストレスや対人関係ストレスが思い浮かばないにも関わらず、抑うつ気分や食欲・睡眠の増減が続くようであれば、季節性感情障害(SAD)の可能性があるかもしれません。また、それらが毎年同じ季節に繰り返されているというパターンが見えた場合にはより可能性が高まります。
基本的には規則正しい生活習慣を送ることで予防は可能です。自分の身体の状態に耳を傾け、無理をせず疲れを溜めすぎないことが予防になります。
さいごに
季節性感情障害(SAD)は、ストレスとなる出来事がないにも関わらず生じるため、自分でもどうしたらよいかわからないことがあるかもしれません。しかし、規則正しい生活習慣など、上記でご紹介した対策を行うとともに、自分自身の身体を労わって生活することが大切です。あまりに辛いときには一人で抱え込まずに医師に相談するようにしましょう。
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(参考:リヴァトレ よくあるご質問)
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産業医科大学 医学部医学科卒業。新日鐵住金(株)専属産業医、(株)三越伊勢丹ホールディングス統括産業医を経て現職。日本産業衛生学会 産業衛生専門医、産業医科大学 非常勤助教。現在、複数の日系企業や外資系企業の産業医、コンサルティングを行っている。