付加価値とブランド力で「農業をもっとカッコよく」【イキカタログ 〜自分らしい生き方対談〜 vol.2 農家・小島宏平さん】

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リヴァトレのサービス開始当初から多くの利用者さんに親しまれてきた「農作業プログラム」は現在、埼玉県入間市にある協力農園さんの畑をお借りして行われています。その農園を切り盛りしているのが園長の小島宏平さん(写真左)。サラリーマン家庭に生まれ育った小島さんが農業を始めた経緯と現在に至るまでの道のりについて、リヴァ代表の伊藤崇(同右)が聞きました。

プロフィール 小島 宏平(コジマ コウヘイ) 農園「FAMFARM(ファムファーム)」園長 1979年埼玉県入間市生まれ。農家での6年間の研修を経て独立、2008年より入間市にて畑を借り受け就農。完全無農薬で年間50品目以上もの野菜を家族4人で栽培し、野菜セットの個人宅配、飲食店、青果店向け卸、朝市イベントなどで販売を行っている。農園名のFAMとはfamilyの略。

自分で何かを作って表現したい
商売人にあこがれた学生時代

伊藤:お久しぶりです!最後に私が入間に来たのは1年前になりますか。

小島:そんなにいらしてなかったですか?まぁ、時間が過ぎるのは早いですね。

伊藤:今日は小島さんの生き方についてじっくり伺いたいのですが、元々農家出身ではないんですよね?

小島:僕はサラリーマンの家庭で育っています。父は仕事が忙しくて、週末しか家にいないような人でした。

伊藤:農業に取り組むきっかけとなる、原体験のようなものはあったんですか?

小島:原体験っていうほどではないですけど、小さい頃から人に言われたことだけをやるのではなく、自分で考えて行動したがる子どもでした。中学生になると「自分の好きなことに打ち込む生き方」に憧れるようになったので、高校には行かずにそば職人になろうと思っていましたね。

伊藤:中学生で目指したのがそば職人ですか?脱サラを考えているサラリーマンみたいじゃないですか(笑)。

小島:両親からは高校に行けと必死で説得されて、結局は進学したんですけど、今度は「ラーメン屋をやろう」と考えて。

伊藤:もともと職人気質のようなものがあったんですかね。

小島:一つのことにのめりこむという意味では、小学生の時に「硬筆」にハマったんですよ。毎日飽きずに3時間も4時間も字を書き続けて、最終的には6段にまで昇格して賞も取ったりしました。お手本を真似しているだけなんですけど、それでも上手く書くことができて、周りの人に褒められることが嬉しかったですね。

伊藤:ラーメン屋になろうと考えて、その後は?

小島:親は大学に行ってほしかったみたいですけど、自分は全く行く気がしなくて。勉強はまあまあ得意でしたけど、親への反発もあって頑なに拒否しました。

伊藤:自分も親から「いい学校へ行って、安定した仕事に就け」というようなことを言われ続けた経験があるので、その気持ちは分かります。

小島:高校3年生になった頃にはファッションに興味を持ち始め、自分でブランドや店を立ち上げたいなと思ったので、服飾の専門学校に通いました。すごく面白かったんですが、流行を作っては壊す…ということを繰り返すファッション業界に疑問を抱くようになって。何かもっと地に足の着いたことをしたくなり、専門学校を卒業する頃には、漠然と農業や田舎暮らしをしたいと考え始めました。

伊藤:服飾から農業ですか。一見接点がないようにも見えますが?

小島:意外かもしれませんが、ファッションブランドのコンセプトやデザインを考えることは、農業というビジネスにも通じる部分が多いんです。専門学校で学んだことは、いまも役に立っていると思いますね。

価値観の変化を期待して東南アジアへ
旅先で初めて気づいた自分の思い

伊藤:では、専門学校を卒業してすぐに農業の道に?

小島:いや、その時はまだ何を仕事にするかすごく悩んでいたんです。それに、これからは日本しか知らないのではダメだなという思いもあり、卒業後は1年ほど東南アジアへ放浪の旅に出ました。

伊藤:どんな風に旅をしたんですか?

小島:1泊200円くらいの安宿に泊まりながら、1つの国に1か月~1か月半ほど滞在する…ということを繰り返し、全部で7か国くらい回りましたかね。当時の東南アジアは物価が安く、数万円あれば1か月は暮らせたんですよ。

伊藤:小島さんの価値観に何か変化はありましたか?

小島:期待していたんですけど、それが意外と変わらなくて(笑)。日本でアルバイトをして資金を貯めて行ったんですけど、所得の差を使えばフリーターの自分でも楽に長期滞在ができたことで、逆に「自分はここで一体何をしてるんだろう」って思っちゃったんですよね。

伊藤:海外にいても期待するほどの変化は得られなかった?

小島:そうですね、海外に行ったからって自分が変わるものでもないなって。例えば、貧しい人たちを助けたいと思ったとしても、日本でも出来るじゃないですか。どこにいようと自分自身は変わらないし、それならむしろ日本に帰って自分と向き合わなきゃいけないな、という気持ちが芽生えました。

伊藤:その旅でほかに印象に残っていることはありますか?

小島:一時期、外国人と一緒に行動していたことがあったんですが、日本人以外はみんな自分の思いに素直なんですよね。特に外国人の中に身を置くと、頭で考えるだけではダメで、自分から行動を起こさないと状況を変えることができない。その感覚のまま日本に戻ってきたので、フットワークがかなり軽くなって、その後で農業を始めるときに生かされたかもしれません。

無農薬、高付加価値、ブランド力
農業をもっと‟カッコよく“

伊藤:帰国した後、どのように農業を始めたんですか?

小島:まずは田舎暮らしを体験してみようと思って、農業ができるペンションに1週間ほど泊まり込みで働きに行きました。

伊藤:海外で培ったフットワークの軽さが早速生かされたわけですね。

小島:その後、所沢市の農家の息子と偶然知り合って。家に遊びに行った時、ご家族の方から「君、いま仕事してないんでしょ?人手が足りないから明日からうちで働いてよ」と言われたことが農業に足を踏み入れたきっかけですね。お茶摘みのアルバイトからスタートしたんですけど、最終的には月に15万円くらいの収入にはなりました。当時は実家暮らしだったので貯金もできたし、その後の独立資金にもなったので、すごくありがたかったです。

伊藤:なるほど、そこから農業生活が始まっていったんですね。

小島:でも、働き始めて1年くらい経ったあたりから自分で農業をやりたくなってきて。「言われたことをするだけではなく、自分だったらこうしたい」っていう気持ちが出てきたんです。

伊藤:自分でやりたいと思ったのはなぜですか?

小島:農薬を使いながら長時間働いて、安く大量に生産をするいわゆる薄利多売の農業に疑問を感じたからです。また、お世話になった農家さんは肉体的にもすごくタフで、ガッツのある人たちばかり。自分が同じやり方をしていたら体力的にも長続きしないし、モチベーションの上でも無理だなと。

伊藤:小島さんがやりたいと思った農業は、どんなものだったんですか?

小島:無農薬でもっと付加価値とブランド力の高い野菜を作りたくて。そうすればもっと楽に稼げるとも思いました。それに、スーパーに並んでいる見た目のきれいな野菜だけでは味気ないし、違和感もあります。

伊藤:違和感ですか。

小島:野菜って本当はもっといろいろな種類があるんですよ。それなのに輸送しやすい形の野菜ばかりが店先に並んで、画一化されたものばかりがどんどん増えていく・・・。そんな世の中が、なんかムカつくなって。この違和感が農業をやる上でのモチベーションになっています。もともと自分は疑問を感じる方だったし、農業もまさにそういう状況だったので、自分でやってやろうと。半分は勘違いですけど(笑)。

伊藤:農業に対する画一的なイメージを変えたかったんですね。

小島:農業ってダサく思われがちですけど、でもやりようによってはすごくカッコよくなるはずなんですよ。人から見ても「カッコいい、イケてる農業」をやりたいし、実際にそれが実現できるんじゃないか、という確信もありました。

農地の確保や顧客の獲得
経営を軌道に乗せるまでは苦労の連続

伊藤:実際に自分で農業をやると苦労も多かったんじゃないですか?

小島:自分の畑を持つことが最難関でしたね。最初は所沢市の農業委員会を訪ねたんですが、その当時、自分はすでに数年農業で経験を積んでいるにも関わらず、「農業大学校に通わないと農家の資格はないよ」って言われたんです。でも、そんな悠長なことは言っていられないので、次は農林振興センターに足を運びました。そこで入間市で有機栽培をやっている人を紹介してもらい、研修生として畑を借りられることになったんです。入間市は耕作放棄地が多く、積極的に土地を貸してくれる雰囲気もあったので、そこは非常にラッキーでした。

伊藤:その後はどのようにしてお客さんを増やしていったのですか?

小島:駐車場などで路上販売をする一方で、Webサイトを立ち上げてそこから受注できるようにしました。各地のファーマーズ・マーケットにも出店してチラシを配ったり、お客さんと直接話したり、あらゆる手段を使って顧客を増やす努力をしましたね。

伊藤:販路を作るなら、農協に入るのが一番の近道だったのでは?

小島:確かに顧客の数を増やすのは時間もかかったし大変でした。でも、自分には最初から直売しかないという思いがあったし、それが上手くいく自信もあったんです。「農協に野菜を出さないか」と誘ってもらったこともありましたが、断っていました。

伊藤:経営的に軌道に乗り始めたなと感じたのはいつ頃から?

小島:数字的にうまく回り始めたのは、自分で農業を始めて4~5年経ったあたりですかね。農地と顧客数の確保が一番苦労したんですが、畑の数と顧客数を思ったよりも上手いバランスでキープしながら増やしていくことが出来たので、それが良かったです。

伊藤:需要と供給がうまくかみ合ったということですね。いまは年間で何種類の野菜を作っているんですか?

小島:だいたい50~60種類くらいで、常時10~20種類は作るようにしています。スーパーでは手に入らない種類の珍しい野菜も結構作っていますよ。例えば白ナスとか、赤いじゃがいもや紫水菜とか…。

伊藤:珍しい野菜を求めるお客さんが多いんですか?

小島:定番のものを求めている人もいるし、変わった野菜が好きな人もいますね。お客さんの言うことばかりを聞き過ぎてもこちらがパンクするし、かといってお客さんの意見を無視することもできない。変わった野菜ばかりでもお客さんが逃げてしまう。最近は定番の野菜と珍しい野菜をバランスよく組み合わせて届けるようにしたことで、喜んでもらえているようです。

伊藤:無農薬であることもこだわりの一つですよね。

小島:無農薬栽培というと「草とお友達」といったイメージを持たれがちですが、実はそう甘くもなくて、草の手入れは本当に大変です。雑草に埋もれて風通しや日当たりが悪いと、野菜の育ちが悪くなります。除草剤が使えない分、マルチを貼ったり、草取りのタイミングも考えながらやったり、いかに手間を省いて農地に草を生やさない努力をするか、それもすごく重要ですね。

※マルチ・・・農業用マルチシートの略称。作物を育てている畑のうねを覆う素材のことで、プラスチック製が一般的。雑草が畑に増えてしまったり、地温を高めたり、雨によって肥料や土壌が削られたりするのを防ぐことができる。

悩む人は悩んだ方がいい
そこからしか出せない結論もある

伊藤:苦労も多そうですが、自分で農業を始めて良かったなと思うことはどんなことですか?

小島:農業ってやることが次々出てくるんですよ。草取りをしてもまた生えてくるし、野菜の成長に合わせた管理もしなければいけない。でも、そういった小さな目標を毎日達成できる喜びがありますね。あとは通勤時間が短いことかな(笑)。

伊藤:自分で仕事をコントロールしているという実感も?

小島:何でも自分で決めないといけないので、自分自身を律する厳しさもありますが、仕事はコントロールできているなと感じます。

伊藤:一昨年、娘さんが誕生したことで生活に変化があったのでは?

小島:娘が生まれてからは、家族との時間を作るために、強制的に休みを取るようになりました。結果として、売り上げや収入を減らさずに休めるようになっています。自分の親が週末しか家にいない状態だったので、きちんと家族の時間を取る意味でも農業を仕事にすることは良いと思っていて、それが実現できているのはうれしいですね。

伊藤:今後さらにやっていきたいことは?

小島:お客さんには畑を身近に感じながら、もっと色々な野菜を楽しんでほしいし、自分自身も心身ともに一層農業を楽しみたいです。さらに「世間の役に立てている」という実感を持ちながら、安定した収入も確保し、かつ休日も取れる働き方ができたら理想的ですね。達成できていない部分もまだあるので、自分が考える農業をもっと磨いていけたらと思います。とはいえ現状に固執せず、20代の時のような新しい形を模索することも忘れずに、自分の思いに正直でいたいですね。

伊藤:もし、いま農業をやりたいという人がいたらどんなアドバイスを?

小島:本当に農業をやりたくて、やれると思うのなら、失敗してでもやる価値はあるかと。成功するか失敗するかは誰にも分からないし、自分が農業を始めたときも、周りからは無理だって言われていたと思うので。時代的には補助金も得やすくなったし、農業を始めやすい環境じゃないかな。ただ、大変なことも多いのでそれなりの覚悟は必要だし、軽い気持ちだったら絶対に勧めないですけどね。

伊藤:最後に、読者の皆さんに向けて自分らしく生きるためのアドバイスをお願いします。

小島:自分の生き方には悩み続けていますが、いま自分らしい生き方ができているとしたら、世の中に対する疑問や「自分は何のために生きているのだろう」といったことを、ずっと悩んだり考えたりしていることが原動力になっていると思います。悩まなくて済むならそれが一番良いでしょうけど、自分はすごく悩むし、考えるタイプなんですよね。でも、悩みに向き合い続けることが自分らしさでもあるし、考えている人にしかできないことや出せない結論もあると思うんです。考えることが好きな人は、考え続けてそれを少しずつ行動に移していけば、そのうち形になっていくだろうし、良い方向につながっていくんじゃないかと思います。

伊藤:本日はどうもありがとうございました。改めて小島さんの農業への熱い思いを伺うことができて良かったです。今後とも末永くよろしくお願いします!

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