私たちが地域の若者のためにできること ~ 一般社団法人ワカツク・渡辺一馬 × リヴァトレ仙台・吉田淳史~

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長期実践型インターンシップを主な手法として、東北の将来を担う次世代人材の育成に取り組んでいる一般社団法人ワカツク。その代表理事である渡辺一馬さん(写真右)とリヴァトレ仙台の責任者である吉田淳史(同左)が対談を行い、若者が活躍できる地域のあり方や、その実現に向けた今後の取り組みについて、意見を交わしました。

プロフィール
渡辺 一馬(わたなべ かずま)
宮城県生まれ。1997年、新設の宮城大学へ第一期生として入学。在学中に参画したサークル・デュナミスを2001年、卒業と同時に法人化し、代表に就任。「世界を変える人材を数多く生み出す仕組みを創る」ことを目指し、学生向けのインターンシップ事業を開始。 震災後、一般社団法人ワカツクを立ち上げ、若者たちの「問題解決」への挑戦を支援、「若者が成長できる東北」を目指して、地域の産官学民をコーディネート。震災後から続くボランティアのマッチングも含め、地域のNPOや企業に、5,000人以上の学生や若者をマッチングし、その後、20人以上が起業。

「失敗を許容できる組織」を増やし、
若者の挑戦の舞台を広げる

吉田:渡辺さんは、ワカツクの前身である株式会社デュナミスでも、若者を巻き込んだ事業を手掛けていたんですよね。

渡辺:はい。Webサイト制作などIT系の業務を企業から請け負い、学生と一緒に制作する形を採っていました。

株式会社デュナミス時代の一馬さん

吉田:現在とは異なる業態だったのですね。インターンシップ事業に切り替えたきっかけは?

渡辺:Webサイトで商品やサービスをどれだけ良く見せても、実際に満足してもらえなければ、リピートはしてもらえません。そこで「本当に企業の課題を解決したいのであれば、商品やサービスの提供といった根本から関わらなくては」と思ったんです。

吉田:Webサイト制作という手段で課題と向き合うことに限界を感じたと。

渡辺:そこからコンサルティングを始めたのですが、企業に学生を預けた方が直に課題と向き合えるんじゃないかと思いまして。そこで、当時インターンシップという仕組みを普及させていた「NPO法人ETIC.」さんの仲間に加わり、事業化に至ったというわけです。

吉田:その後のワカツク設立は、東日本大震災が契機になったのですよね。

渡辺:そうですね、震災時はコーディネーターとして、大学生ボランティアと被災地を結ぶ役割を担っていました。被災地に赴く中で驚いたのは、阪神・淡路大震災の時に大学生だった30代のボランティアの方が多かったことです。「当時お世話になったので、手伝いに来ました」と聞き、胸が熱くなりましたね。そこで、被災した宮城の大学生たちも、同じように社会のために行動できる人材になってくれたらいいなと思いました。若者が挑戦し続けられる環境づくりに特化すべく、ワカツクを設立したというわけです。

吉田:素敵なエピソードだなぁ。ワカツクの主な取組みである「実践型のインターンシップ」はどのようなものなのでしょうか。

渡辺:期間は1~6か月と様々なのですが、どれも参加する学生の成長だけを目的にしていません。企業さんには「戦力として学生を受け入れてください」とお願いしているので、他の社員さん同様に責任のある仕事へ携わることになります。まずは、企業の目指す方向性から一緒に考え、現状を把握した上で課題を洗い出す。その解決のための打ち手を考えて、行動していくというのが主な内容です。

インターンシップ成果報告会の様子

吉田:日々、目の前の業務に追われ、目指すあり方を忘れがちな企業も多いと思います。社員さんたちも安定を重視して、変化を求めていなかったり。そんな状況の中で、若者の力は現状を打破するきっかけになるのではないでしょうか。

渡辺:おっしゃる通りです。特に中小企業では、インターン生が社長の一番の味方になるんです。「社長の目指したい方向が面白そうだから、私手伝います!」というインターン生が現れると、周りの社員さんたちも「じゃあ応援しようか」と状況が変わることも多くて。

吉田:なるほど。そもそもの話になりますが、なぜ「実践型のインターンシップ」という手法で地域との関わりを持っているのでしょうか。

渡辺:挑戦できる、言い換えれば「失敗を許容できる組織を増やしたい」という思いがあります。学生は失敗を許してもらえる社会的立場であり、その失敗は本人の成長にも直結しますから。企業としても「伝え方が間違えていたのか」「フォローが足りなかったのか」など、失敗させてしまった原因を学ぶことができます。そうして失敗をコントロールできる企業になると、人が成長できる環境に変わっていくんです。

吉田:ビジョンを掲げ、失敗を恐れない企業が増えていくことで、若者たちの挑戦の舞台はぐっと広がりますね。

渡辺:知名度や待遇、業種や職種だけで企業を選ぶのは勿体ないですよね。企業が幸せにしたい対象と、自分が幸せにしたい対象が重なるかどうかで選択できたらいいんじゃないかなぁと。「この人たちを幸せにしたいから自分はここで働いているんだ」って感じられたらモチベーションになると思うんです。

疾病を「自分らしさに気付き、踏み出すチャンス」と
感じてもらえる支援を提供したい

吉田:震災から8年が経過し、宮城で活動する若者は減少していますよね。当時に比べ、目に見える困りごとが減ってきたからこそ、危機感が薄れてしまう。そういった状況の中で、若者が宮城をチャレンジの場として選択しにくくなりつつあるのかなと思います。

渡辺:そうですね。目の前の状況だけを課題と捉えてしまうと、課題意識は持ちにくいのでしょう。でも本当の課題と向き合うためには「こんな街の風景を創りたい」「こんな人たちを幸せにしたい」という、地域の未来を描くことが大切だと思います。その未来から現在の状況を引いたものが課題になるというわけです。

吉田:企業の経営同様、目指したい姿を語り合うことがスタートライン。そういう意味では、関わり方は無限ですし、チャンスはいくらでもありますね。若者がチャレンジできる環境づくりとして、メンタルヘルス対策も重要だと考えますが、若者が抱えるメンタルヘルス不調について何か問題は感じていらっしゃいますか?

渡辺:若者に限りませんが、心に問題を抱えている方は多いですね。震災体験によるストレスはもちろん、震災特需の終焉に伴う経済的なダメージや学習機会が失われたことによる学力低下など、震災から時間が経ったからこそ、顕在化する問題があります。他にも、東北地方の大学は偏差値の差が顕著です。東北大学を志望する生徒は、試験に落ちると偏差値が大きく離れている大学に行かざるを得ません。その結果、モチベーションの低下から体調を崩してしまったという話も度々耳にしますね。

吉田:「周囲からの期待に応えないといけない」という考えから過剰に自責の念に囚われたり、「レールから外れてしまった」と感じたりすることが、その後のひきこもりなどに繋がるケースもあるようです。

渡辺:そうですよね。いずれにしても「問題が起きない社会をつくること」ではなく、「起きるものとして対処法を確立していくこと」が大切だと考えます。それぞれの立場での正しさがあるから、お互い苦しむのであって、問題を無くそうとすると、本質的な解決にはならないと思うんです。

吉田:「起きちゃいけないこと」にしては解決には繋がりませんよね。

渡辺:僕は昔いじめられていた自覚があるのですが、隠すことじゃない。自分は完全ではないことを受け入れて、前に進むしかないんです。だから、リヴァトレが掲げている「戻ろう、ではなく、進もう。」ってとても良いメッセージだと思うんですよ。

吉田:ありがとうございます。うつをはじめとする精神疾患も偏見や差別はまだ残っていますし、当事者の方は「早く元の自分に戻りたい」と考えがち。だからこそリヴァトレでは、疾患を自分らしさだと気づき、踏み出すチャンスだと感じてもらえるような支援を目指しているんです。

渡辺:リヴァトレのようなサービスがあると地域としては心強いですよ。インターン後の就職活動が上手くいかず、体調を崩してしまう子もいるのですが、心のケアについて大学のキャリアセンターが対応できる限界はありますし。

吉田:リヴァトレを学生が利用するにあたっては「就労を支援する」という福祉制度の性質上、疾病を抱えていて卒業年度であることなど一定の条件があるのですが、お困りの方がいればぜひご紹介いただければと。私たちの施設の利用ありきではなく、まずは困りごとの解決策を一緒に考えたいと思います。

若者のチャレンジを後押しし、
ともに「これからの宮城」をつくる

渡辺:リヴァトレ仙台は今後、どのように展開していきたいとお考えですか。

吉田:東北と東京を繋ぐ窓口となって、両エリアの人々の自分らしく生きるための選択肢を広げたいです。東京でやりがいを感じられなくなってしまった人も、地方の1次産業ではその能力が重宝されて働きがいを見つけることができるかもしれません。逆に、地元や仙台で挫折した人も、より多様性のある東京で暮らすことで「世の中にはつらい経験を乗り越えて頑張っている人が沢山いるんだな」と知り、救われることもあるんじゃないかなと。

渡辺:生きにくさを抱えた人が自分らしくいられる環境を選べるっていいですねー。ワカツクでは「ふるさと兼業」というポータルサイトの運営にも関わっていて、主に都市部の方と地域の企業を繋いで、リモートワークでの兼業を推進しています。移住はハードルが高いでしょうから、リヴァトレの利用者さんも場所を問わずに仕事やインターン先を選べる仕組みを作れたら面白そうですね。

吉田:そうですね。障害者のテレワークによる在宅就業へ向けた動きは既に事例が出てきていますし、都市部と地域の垣根を超えた就業先の選択肢は広がっていくと思います。ワカツクの今後はどのように考えていらっしゃいますか?

渡辺:やはり、宮城でチャレンジする若者を増やしていきたいですね。東京はチャレンジをしに人が集まりますから、若者同士のライバルが多いのですが、宮城のような地域ではまだ数が少ないので、目立ちます。その分、協力者も募りやすいですし、吸収できることも多くなるんです。あと、宮城は産業構造上、利幅が狭いんです。例えば、仙台は商業が発展していて一見きらびやかですが、実際には低価格競争が激化し、品質の高いものも安く売られてしまっています。この状況に対して、しがらみに囚われない若者だからこそ、付加価値を生み出して街を豊かにしていけるんじゃないかと期待しています。

吉田:そうですね。ワカツクさんのような想いを持った方々と協働しながら地域課題を解決していきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました!

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この記事を書いた人
菅野 智佐 株式会社リヴァ 2018年度入社

1996年福島県生まれ。山形大学を卒業後、新卒社員としてリヴァへ入社。「リヴァと関わったことで、自分らしい生き方について考えられた」という人を増やしたいと、リヴァマガの運営管理に携わっている。

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