【イベントレポート】「本の街で、こころの目線を合わせるー私の生きづらさ、コミックで届け」に弊社スタッフの中川が登壇しました

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こんにちは。スタッフの菅野です。

去る9月13日(金)、神保町ブックセンターにて開催されたトークイベント「本の街で、こころの目線を合わせるー私の生きづらさ、コミックで届け」に弊社スタッフの中川が登壇しました。

当日は30名を超える参加者の皆さんに、双極性障害を抱えるまいさんの体験談や弊社の取り組みの紹介を通じて、当事者を取り巻く環境について理解を深めていただきました。

今回はそのトークイベントの模様についてレポートします!

 

登壇者のプロフィール

まい
1988年生まれ。2016年、3年目の職場で違和感を覚えはじめ、29歳の時に双極Ⅱ型障害と診断。2回の休職を経て、会社を退職。休職期間中に、日々の記録をマンガに描きはじめ、SNSにアップする。現在は寛解し、仕事をしながらマンガを描いている。
中川 洋(ナカガワ ヒロシ)
精神保健福祉士、産業カウンセラー。上京後新卒で入社したベンチャー企業で営業を担当するも、仕事で心身をすり減らしていく自身や同僚に疑問を感じ、「働く人のメンタルヘルス」に興味を持つ。退職して産業カウンセラーの資格を取得した後、うつ病等の方への社会復帰支援を行う株式会社リヴァに入社。現在は同社の支援施設であるリヴァトレ高田馬場のセンター長として、職場復帰支援(リワーク支援)に携わる。

■ 合わせてご覧ください
双極性障害ってどんな病気?

まいさんの体験談
~「誰かの役に立ちたい」という思いが、私を救ってくれた~

トークイベントではまず、まいさんに漫画「まいちゃんの双極取扱説明書」に描かれている、自身の疾病経験について話していただきました。

大学を卒業して複数の会社での勤務を経験した後、26歳で印刷会社に就職したまいさん。締切に追われる多忙な日々を3年ほど過ごした頃から食事が喉を通らなくなり、日常生活をまともに送れない状態に陥ったそうです。

仕事でもミスが増え、どんどん自信をなくし、またミスを繰り返す…という負のループに。そんな中、訪れた病院で「双極性障害」との診断を受け、休職することに。

まいさん: 休職中は、1日でも早く復職しなければと焦っていました。「仕事を押し付けてしまって申し訳ない」「社会の一員としての役割を果たせていない」といった罪悪感にも苛まれ、布団の中でずっと泣いていましたね。

2か月後、産業医の制止を聞かずに無理やり復職するも、3か月で再び休職。最終的に退職することになりますが、その決断に至るまでにも、様々な葛藤があったそうです。

まいさん:経済的な不安もありましたが、何より東京を離れたくなくて。茨城県出身で、ずっと東京に憧れていましたし、やりがいのある仕事だったので辞めたくなかったんです。でも、心配した家族から「体も心もボロボロだよ…」と言われ、これ以上迷惑はかけられないと退職を決断しました。

元々絵を描くことが好きだったまいさん。休職期間中に「誰かに必要としてもらえたら」とすがる思いで、自身の経験を漫画で描き、SNSに投稿していました。次第に共感の輪が広がり、出版社から声がかかったことで、書籍化が決定。

しかし、それまでの道のりは、自分の過去と向き合う辛い作業の連続だったそうです。特に、職場での様子を描く際は記憶がフラッシュバックして、涙することもあったとか。それでも「同じような体験をしている人に共感してもらえるように」と自分を奮い立たせて描き上げられました。

まいさん:本を出版できたことで、「社会の一部に戻れたのかな」と自分を認めてあげることができました。SNSのコメントやファンレターを通じて温かい言葉をいただいたことも嬉しかった。「誰かの役に立ちたい」と思って始めた活動ですが、私が一番救われていたようです。

現在まいさんは寛解し、週3日ほどアルバイトをしながら、漫画を描き続けています。

(▶まいさんの漫画「まいちゃんの双極取扱説明書 」については、こちらから)

リヴァトレとは?
~自分らしい生き方とじっくり向き合えるリワーク~

続いて、中川がリヴァトレについて紹介しました。

リワークとは、療養を経てある程度コンディションが整った休職中の方を対象に、社会復帰に向けたウォーミングアップを行うことをいいます。療養生活と職場環境のギャップを埋め、再発のリスクを軽減することが目的です。

 

リヴァトレで提供しているプログラムは、大きく4つのカテゴリに分けられます。

中川:リヴァトレで特に力を入れているのは、生き方・働き方に関するキャリア系のプログラムです。まずは「自分がどんな生き方をしたいのか」に向き合い、その上で復職も選択肢の一つとして捉え、より自分らしい働き方を探求していきます。

様々なプログラムに加え、スタッフや利用者同士の関わりからもストレス反応や対処法を学び、実践を繰り返すことで、社会復帰の準備を整えていきます。

まい:職場ではどうしても「ミスしちゃいけない」「100点を求められている」と考えてしまいがちですから、リワーク施設のような、社会復帰前の「失敗できる環境」は大事ですね。


■ リヴァトレについてもっと知りたい方はこちらから

まずは、疾病を正しく理解することから始めよう
~当事者が周囲の人に求めることとは?~

社会における双極性障害の認知度はまだ低く、うつ病と混同されてしまうことも少なくありません。「周りの人たちには、疾病を正しく理解することから始めてほしい」とまいさんは言います。

まいさん:うつ状態の時は両腕両足、お腹に鉛が巻き付けられたみたいになって動けないんです。だから、ただ放っておいてほしい。でも逆に軽躁状態の時は自覚がなくて、夜中まで電話をしてしまったり、相手が不快に思うことを平気で言ってしまったり。だから、私の場合は「変だな」って思ったことは伝えてほしいです。
中川:まいさんの場合は「声が大きいよ」など“事実ベース”で普段と違うところを伝えられると良さそうですね。求める関わり方は、人それぞれに異なると思うので、普段からコミュニケーションを取る相手と”どう関わってほしいか”等をすり合わせてから伝え合うのがおすすめです。

まいさんは周囲の人に理解を求めるだけでなく、自身でも工夫をして関わりを持っているのだとか。「あなたを不快にすることを言ってしまったらごめんね」「雨の日は体調が悪くなるから、約束の時間に来れなくても許してね」などと、先に断りを入れておくことで、人との関わりが楽になったそうです。

 

他にも疾病と向き合う上で、「部分肯定」という考え方が話題に挙がりました。

中川:部分肯定とは「小さな成功体験を積み重ねる」ことです。1日をまるっと振り返って良し悪しを判断するのではなく、「起きられた」「ご飯を食べられた」などと、日常生活を細かく区切って、できていることに目を向けられると良いと思います。
まい:私も部分肯定を意識しています。「ハッピー貯金」と呼んでいるのですが、その日にできたことや、楽しかったことを小さく切った折り紙に書いて、瓶に貯めています。できたことが目に見える形で増えていきますし、たまに見返すと元気をもらえるのでおすすめですよ。

 

Q&Aのご紹介

イベントの最後に、参加者から寄せられた質問とその回答を一部ご紹介します。

 

Q:医師に病名を告げられるのが怖いです。どうしたら病院へ行けるようになるでしょうか。

まいさん:症状が深刻でなければ、まずは会社の産業医やカウンセラーと話してみたり、カウンセリングをしているクリニックに行ってみるのはどうでしょうか。診断はされませんし、現在の気持ちを吐き出してみることで楽になれるかもしれません。また、身体症状も出ていると思うので、内科から受診してみて、必要に応じて紹介された専門機関に行ってみるのもいいと思います。

病名については、お医者さんからの受け売りですが「病名は薬を処方するために付けるものだから、診断されたからといって落ち込むことはない!」と考えるようにしています。

 

Q:うつ状態で頭が働かないときは、どのように対処をしていますか。

まいさん:私は思考力が低下すると食事を摂らなくなる傾向があるので、必ず3食摂ることを意識しています。あとは生活リズムを崩さないように、寝る時間も決めていますね。
中川:まいさんのように自分の傾向を掴んでおき、事前に対処法を決めておけるとよいですね。調子が悪いときは視野が狭くなってしまうので、体調が安定しているときにあまり負荷のかからない対処法を考えておくことで、楽に過ごせると思います。

 

Q:リワークに通い始めるのに、ちょうど良いタイミングとは?

中川:主治医に相談していただくのが良いでしょう。ちなみにリヴァトレでは「週2日程度、日中活動ができる状態かどうか」を基準の一つとしています。他にも、感覚値ではありますが、「体を動かしたい」「そろそろ外に出たい」と自然に思えるかどうかもリワーク利用のタイミングを計る基準になると思います。

 

Q:診断後、家族とはどのように関わっていましたか?

まいさん:診断を受けてすぐに2人の妹が本屋で「双極性障害」と書いてある本を片っ端から読み、「うつ病とは違う病気だ」「長い間薬を飲まなくてはならない」「完治ではなく寛解と考える」といった情報を得て、それを両親にかみ砕いて説明してくれたんです。理解者を得られたことは本当に心強かったですね。

そんな中、理解してくれるのに時間がかかったのは父でした。「気合で治る」と言われて落ち込んだり、療養中の「車でハローワークに連れて行ってあげるよ」という優しさが辛かったり。でも、妹の発案で診察に同席し、主治医から疾病や薬について説明を受けてもらってからは「気晴らしに映画に行こう」「音を聞きたくないなら美術館に行こう」などと言ってくれるようになり、関わり方が大きく変化しました。

おわりに

双極性障害をはじめとする障害や病気は、本人や身近な人に症状が表れない限り、なかなか自分事として捉えにくいものです。今回のイベントを通じて、当事者以外の方にも疾病についてご紹介できたことは、誰もが生きやすい社会の実現に向けた貴重な機会だったと思います。

「本の街で、こころの目線を合わせるー私の生きづらさ、コミックで届け」は、連続イベントとして実施されており、様々な障害や病気がテーマとして取り上げられています。

各回の詳細は、神保町ブックセンターのWebサイトに掲載されていますので、興味を持たれた方はぜひ足を運んでみてください。

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この記事を書いた人
菅野 智佐 株式会社リヴァ 2018年度入社

1996年福島県生まれ。山形大学を卒業後、18卒として(株)リヴァへ入社。ラシクラ事業部・新卒採用の責任者を兼任しながら、新規事業「あそびの大学」の立ち上げに至る。自分らしいと感じる瞬間は「物事の背景を探求している時」。趣味は、DIYと金継ぎ。

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