「適応障害と診断されたけど、経済的な不安やキャリアのことを考えると休職したくない……」と悩んでいませんか?
適応障害を抱えていても、環境の調整や働き方の工夫次第で働き続けることは可能です。ただし、無理をしてこれまでの働き方を続けると、体調が悪化してしまう場合があります。
本記事は、適応障害でも働き続けたい場合の5つの対策や、休職する場合の復職までの流れについて解説します。
ご自身の心と体の状況と照らし合わせながら、無理のない選択肢を見つける参考にしてみてください。
目次
そもそも適応障害とは どんな症状?
適応障害とは、何らかのストレス(あるいは生活の変化や出来事)を原因として、普段の生活が送れないほど抑うつ気分や不安、心配が強くなり、それが明確に正常の範囲を逸脱している(≒ストレスを感じる環境に適応できなくなった)状態のことをいいます。
また、仕事や家庭、人間関係など、ストレスとの関係が比較的はっきりしているケースが多い精神疾患のひとつです。
自力での解決・解消が難しい場合や、症状が続くような場合は、一人で抱え込まずに精神科や心療内科等、専門の医療機関を受診することをおすすめします。
初診は予約が必要なクリニックもあるため、受診先の受付時間や診療内容をwebサイト・電話で確認しておくと安心です。専門医に相談することで、適切な診断や治療を受けることができます。
主な症状
以下では、適応障害で見られやすい症状を紹介します。心身に出るサインを理解しておくと、早めの対応につながります。
<情緒的な症状>
不安、抑うつ、焦燥、過敏、混乱、緊張、落ち込みなど
<身体症状>
不眠症などの睡眠障害、食欲不振、動悸、全身倦怠感、疲れやすい、頭痛、肩こり、腹痛、吐き気、めまいなど
<問題行動>
遅刻、欠勤、早退、過剰飲酒、ギャンブル依存など
うつ病と違い、適応障害は「症状の原因となったストレスが明らかで、そのストレスがあった日から3か月以内に発症する」「原因となるストレスがなくなれば、6か月以内に症状がおさまる」ことが特徴です。
そのため、適応障害を良くするには、日常生活や仕事に支障をきたす前に、原因となるストレスを取り除くことや、ストレスへの対処法を身につけることが大切です。
適応障害を抱えながら働ける?
結論から言うと、ストレスの原因を取り除く、あるいは距離を置くことができる環境であれば、休職せずに働き続けることは可能です。しかし、同じ環境でストレスの原因となっている環境にとどまり続けると、症状が悪化する可能性があります。
症状を長期間放置してしまうと、集中力の低下によってミスが増えたり、遅刻や欠勤が続いたりして、周囲から「怠けているのでは」「やる気がないだけでは」と誤解を受けてしまうことも少なくありません。
休職を回避するためには、具体的な対策を検討することが必要です。
休職したくないときに働き続けるための5つの対策

適応障害を抱えながら働き続けると症状が悪化する可能性があるため、基本的には十分な療養が必要です。しかし様々な事情から、どうしても休職できないというケースもあるかと思います。
ここでは、働きながらも状態を悪化させないためにできる5つの対策をご紹介します。症状が悪化して限界を迎える前に、早めに対処しておくことが重要です。
通院して治療を継続する
適応障害の治療には、継続的な通院が欠かせません。仕事が忙しいと通院が後回しになりがちですが、「少し良くなった」と自己判断で通院や服薬を中断すると、症状が再発・悪化するリスクがあります。
主治医に現在の体調や職場環境について定期的に相談し、着実に治療を続けましょう。
ストレスの原因を把握し、対処法を身に付ける
適応障害は特定のストレスが引き金となるため、まずは「何が自分にとってストレスになっているか」を明確にすることが大切です。
原因を把握できれば、それを避ける工夫や対処法を考えることができます。 たとえば、仕事でミスをしたときに「自分はだめだ」と極端に考えてしまう思考のクセがある場合、別の視点を持てるようになると気持ちが楽になります。
カウンセリングや「認知行動療法」などを通じて、ストレスへの柔軟な対処法を身に付けることも効果的です。
一人で抱え込まずに相談する
適応障害は、一人で悩みを抱え込むと症状がさらに悪化する可能性があります。つらいときは、以下の相手や窓口を頼るようにしましょう。
- 職場(上司や人事)に相談する
「どういうときにミスが起こりやすいのか」「どういう仕事なら続けられるか」を伝え、業務量の調整や配置転換などを相談してみましょう。 - 産業医やメンタルヘルス窓口に相談する
上司に直接相談しづらい場合は、社内の相談窓口や産業医を活用しましょう。専門的な視点から、健康管理や職場環境の改善に向けたアドバイスをもらうことができます。 - 主治医に相談する
体調や仕事の悩みを主治医に率直に伝えることで、医学的な見地からの助言や、必要に応じた診断書の作成などのサポートを受けられます。 - 家族や友人に相談する
「解決策を求める」というよりも、ただ話を聞いてもらうだけで心理的な負担が軽くなり、考えが整理されることも多くあります。
生活リズムを整え、睡眠と休息を最優先する
適応障害を働きながら改善するには、生活リズムを整えましょう。不規則な生活が続くと、ストレス耐性を下げ、症状が悪化する可能性があります。
睡眠不足が続くと、日中の眠気が強くなったり、寝たのに疲れが取れなかったりします。その結果、仕事でミスを連発して、さらに落ち込んでストレスを溜め込んでしまう悪循環になる可能性もあります。
夜に眠れない場合は、マインドフルネスやストレッチ・軽い運動を自分のペースで行うようにし、決まった時間にベッドに入ることを意識しましょう。
業務中も無理をしない工夫を取り入れる
適応障害を抱えながら働く場合は、ご自身でも負担を減らす工夫を取り入れることが大切です。適応障害はストレスによって悪化しやすいため、日常的に無理をしない働き方を意識してみましょう。
たとえば、25分作業して5分休む「ポモドーロ・テクニック」は、集中力を保ちながら疲れをためにくい方法としておすすめです。
また、重要な業務は比較的エネルギーがある午前中にこなし、午後はルーティン作業など負荷の軽い作業に充てるといった時間の使い方も効果的です。
それでも体調が優れない日は、無理をせず上司や主治医に相談し、半日休暇や1日休暇を取得しましょう。
休職の判断基準と復職までの流れ

適応障害はストレスの原因から離れられると早めの回復が期待できる病気です。どうしてもストレスの原因が改善できない場合、休職を検討することも選択肢に入れておくと良いでしょう。
休職は一時的にストレスの原因から距離を置き、体調を整えるための有効な手段です。医師に相談したうえで、無理をしたまま仕事を続けるのは避け、休職してストレスの原因から離れることも検討してみてください。
働き続けるか休職するかの判断基準
働き続けて、以下のようなサインが出てきたら休職することも検討しましょう。
- 家族や上司から「休んだ方が良い」と言われた
- 単純なミスが増える
- 眠れない/寝すぎてしまう等、睡眠に問題が生じている
- 食欲がなくなる
- 動悸がする/涙が出てくる
これらのサインが現れた場合、適応障害などのメンタル不調が悪化している可能性があります。
今の時点で医療機関に通院されていない方は、近くのメンタルクリニックや心療内科を確認し、早めに予約を取ることをおすすめします。主治医と休職の選択肢も含めた相談ができると良いかと思います。
なお、心療内科や精神科は平日の日中しか診療していないところも多く、「仕事があってなかなか受診できない」と感じる方もいるかもしれません。
その場合は、上司や職場に相談して半日休暇をとって受診するのも一つの方法です。「メンタルの不調で病院に行きたい」と正直に伝えることへのハードルは高く感じるかもしれませんが、早めに動くことが症状の悪化を防ぐことにつながります。
適応障害などのメンタルヘルス不調の平均休職期間
適応障害などメンタル不調による平均休職期間は「107日(約3.5ヶ月)」といわれています。
さらに症状の程度によっても、休職期間は変化します。症状が軽度な場合は1ヶ月程度、中等度の場合は3ヶ月から6ヶ月程度、重度の場合は1年以上の休職期間を必要とする場合もあります。
ただし、これらは一般的な例に過ぎません。置かれている状況や生活環境によって休職期間は変わるため、前述の平均休職期間や症状ごとの休職期間は、あくまで目安として捉えてください。
休職期間が長引く理由には、症状の重さだけでなく、職場環境や生活環境の影響もあります。
休職する場合は、まずは心と体をゆっくり休ませることを最優先にし、復帰時期は主治医と相談しながら決めていきましょう。
休職から復職までの過ごし方
まずは療養する
- ストレス源から離れて休養する
適応障害で、日常生活や仕事をこれまでと同じように行うことが難しくなった場合、休職して十分な休息を取ることが必要です。適応障害の特徴として「特定のストレスが原因で発症する」ことが挙げられるため、休職中はストレス原因から十分に距離を取ることが必要になります。
休職し始めると、「自分が休んで迷惑をかけては、職場の仲間に申し訳ない」「休職中に何かをしなければ」と不安や焦る気持ちも出てくるかと思います。
しかし、休職期間中に焦って無理に動こうとすると、さらなる体調悪化につながり、休職期間が延びてしまうリスクや、復職後に適応障害が再発・再休職するリスクが高くなります。
主治医や産業医が休職を判断しているということは、十分休息を取って治療に専念する必要性があるということです。まずは「休むことに集中すること」を心がけ、体への負担を減らし、仕事や家事、その他不安やストレスになることからも可能な限り距離を置いて心を休めましょう。
- 主治医と相談しながら治療をする
休息と並行して、病院には定期的に通院し、治療を受けましょう。適応障害は、原因となったストレスから離れることで比較的早期に回復すると言われていますが、「調子が良いから大丈夫」と自己判断で治療や通院を中止してしまうと、再発のリスクとなります。
適応障害の治療には薬物療法が用いられることもありますが、主治医に処方された薬は、飲み始めた後から効果が出るまで多少の時間がかかるとされています。すぐに薬の効き目が感じられず不安になっても、自己判断で服薬をやめたり減らしたりせず、まずは指示通りに服薬を続けてください。
もし副作用が強い場合は、早めに主治医に相談しましょう。
また、治療を進めていくと、体調がよくなったり悪くなったりといった波が見られるようになります。一見症状が落ち着いてきたとしても、一時的な回復である可能性があるので、そのタイミングで急に活動量を増やしたり、治療を中止したりせずに、主治医と相談のうえで治療を継続しましょう。
体調が安定してきたら、生活リズムを整える
ある程度心と体の調子が安定してきたら復職の準備に入るため、主治医と相談しつつ徐々に活動を増やしていくことが大事になってきます。ただし、安定してきたからといって活動量を急に増やすのではなく、徐々に負荷を上げていきましょう。
休職前の活動量に戻していく中で、ご自身の「生活リズムの記録」を取り始めるようにすると、後から活動を振り返る際に役に立ちます。生活リズムの記録とは、起床・就寝時間や食事時間、その他1日をどう過ごしたかを、手帳や表に記録することです。
記録は、体調が安定し始めてきて、毎日記録をつけることに負担を感じなくなってきたタイミングで始めるようにしてみてください。スマホやメモ帳、手帳など、使いやすい記録手段で書いていただくのが良いでしょう。
継続的に記録を取ることによって、一日の過ごし方や回復までの変化が客観的に見え、今の自分の状態が分かりやすくなりますし、主治医や職場に回復状況を伝えるときの参考資料にもなります。
また、再発予防の観点からも自分の体調パターンを把握しておくと、事前に対処もしやすくなります。
復職に向けた準備をする
適応障害の治療により、体調が安定した状態を維持できるようになったら、医師とも相談しながら、復職に向けた具体的な準備を進めていきましょう。
復職の目安として、次のような判断基準が挙げられます。事前にチェックしておくと、ご自身の復職までに必要な準備も分かってくるかと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
【復帰判断のチェックリスト】
- 復職の意思が十分にある。
- 通勤訓練を行い、通勤時間に自宅から会社に移動することに無理がない。
- 決まった勤務日・時間に就労できる(または就労と同じくらいの負荷の活動)を継続できている。
- 作業による疲れを、翌日までに十分回復できている。
- 生活リズムについて、仕事をしているときと同じスケジュールで過ごすことができ、かつ安定している。
- 睡眠と食事のリズムが安定しており、十分に取れている。
- 注意力・集中力が十分に回復している。
また、適応障害の場合は「発症の原因となったストレス」が特定されていることが多いはずです。不安を軽減するためにも、復職後の部署異動など、ストレス原因から離れた形で復帰ができるかどうか、会社側と話し合ってみるのもよいでしょう。
しかしながら、原職復帰を求められるケースもあります。ストレス原因を分析し、ご自身の捉え方や行動パターンを見直すなどのストレス対処を身に付けておくことが肝要です。認知行動療法は、ストレス対処を増やす一助となります。
部署異動などでストレス原因から離れられたとしても、油断は禁物です。職業生活を送る以上、よく似たストレス原因にさらされることは不可避です。ストレス対処をできるだけ多く身に付けておくことが復職後の安定就労の鍵となります。ストレス対処についての詳細はこちらの記事にまとめていますので、ぜひご覧ください。
会社の人事の窓口と、復職した後の働き方について相談し、どういった形で復職をするのか、しっかりと話し合うことはとても大切です。復職後の環境調整の要望は、主治医の意見書を通じて「医学的な判断」として会社側に伝えることができると、調整がスムーズに運ぶと言われています。
復職に向けてリワークを利用し、ストレス対処を見直したり、タスク管理やチームでのコミュニケーションなどビジネススキルをブラッシュアップするのも良いでしょう。リワークの詳細はこちらの記事にまとめています。
「適応障害で休職したくない」よくある質問

ここでは、適応障害で休職したくない方からよく寄せられる疑問にお答えします。「休職したら解雇されるの?」「収入はどうなるの?」など、不安に感じやすいポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
休職すると解雇の対象になりませんか?
休職したからといって、すぐに解雇になるわけではありません。ただし、休職期間が満了しても体調が回復していない場合は、会社が休職期間満了による退職(自然退職・自動退職)」扱いを検討するのが一般的です。
また、会社によっては休職制度を設けていないところもあります。休職制度がない会社で長期欠勤が続くと解雇リスクが高まるため、まずはご自身の会社の就業規則を見直し、制度の有無や休職期間を確認してみましょう。
休職期間中の経済的支援はありますか?
休職中は働けないため、収入面が気になる方も多いでしょう。ただし、休職中でも以下のような経済的支援制度を利用できます。
- 傷病手当金
- 自立支援医療制度
傷病手当金とは、健康保険、各種共済組合などの被保険者が、病気やけがで働けなくなっている期間に受け取ることのできる給付金です。目安として、「休職前の給与の約3分の2の金額」が支給されます。
また、自立支援医療制度とは、適応障害などメンタル不調で通院が必要な際に、医療費の一部について支援を受けられる制度です。診察費・薬代・デイケア費・訪問看護費の自己負担額が「原則1割に軽減」されます。
制度を利用することで、お金の不安を減らしながら療養に専念できるでしょう。
各種制度の詳細や申請方法については、こちらの記事にまとめています。
休職期間中に退職は可能ですか?
休職期間中でも、退職することは可能です。ただし、退職は大きな決断です。心身が整っていない状態では判断力に揺らぎがあるため、退職を即決することはお勧めできません。以下のような状況で、復職か退職か迷っていて検討したい場合は、一人で抱えずに主治医や会社と相談しましょう。
- 体調が安定していない
- 職場の環境に変化がない
- 仕事に対する価値観が変わった
- 休職期間が満了になる場合
復職を希望しているものの、いきなりフルタイム勤務に戻るのが不安な場合は、短時間勤務やリワークプログラムを試してみるのもよいでしょう。
段階的に働くことで、自分の体調や働き方の相性を見極めることができます。
また、転職活動を並行して行うことで、選択肢を広げるのも一つの方法です。退職を決める前に、新しい職場の可能性を探したり、キャリア相談を受けたりすることで、自分に合った働き方を見つけやすくなります。
自分の状態や職場の環境を冷静に見極め、無理のない選択をすることが大切です。
無理をせずに相談しよう
「休職したくない」と思うのは、責任感を持って、今日まで懸命に仕事や生活に向き合ってきた証拠です。
適応障害を抱えながら働き続ける道はありますが、決して「一人で無理をして耐え続ける」べきではありません。
体や心が発している小さなサインを無視せず、まずは主治医や職場の信頼できる窓口、産業医などに今の気持ちを打ち明けてみてください。
あなたにとって最も負担の少ない働き方のバランスを、周囲の力を借りながら一緒に整えていクことが、回復への第一歩になります。
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