休職・離職中にこそ「農作業」を。考えすぎた頭を休め、五感を使う体験が「働く土台」になる理由

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こんにちは、リヴァマガ編集部の藤賀とうがです。 今回は、リヴァトレが2011年の創業以来、実施している「農園体験プログラム」に参加してきました。

最初にプログラムの存在を知ったとき、ふと疑問に思いました。

「メンタル不調で休職・離職中の方が、なんで農作業をするんだろう?
「たしかに気晴らしにはなりそうだけど、復職や再就職にとって意味があるのかな?

これらの疑問を解消するべく、実際に農園へ行ってきました。

リヴァトレの利用者の方やスタッフの話を聞き、自分自身も土に触れるうちに、単なる「気晴らし」にとどまらない気づきが見えてきたので、本記事でご紹介していきます。

頭で考えすぎずに人と関わる練習が、
農園なら「無理なく」できる

都心から少し離れた農園へ向かうバスの車内。 隣り合わせたのは、今回が二度目の参加だという利用者のTさんです。柔らかい雰囲気の方で、初対面の緊張もすぐに解けていきました。

和やかに雑談を交わす中で、私が抱いていた率直な疑問を、Tさんに聞いてみることにしました。

藤賀とうがTさんは、どうして農園体験に参加しようと思ったんですか?

Tさん:一見、無関係に思えるかもしれませんが、「自分のコミュニケーションを変えたい」と思ったのがきっかけでした。

私は仕事で忙しくなると、自分の感情や思ったことを素直に表に出せなくなる癖があったんです。誰かに相談したいと思っても、「なんて言えばいいだろう」と考えすぎてしまって。

藤賀:なるほど。考えすぎて言葉が出てこなくなる感覚、私にも覚えがあります。でも、そこからどうして農業にいきついたのですか?

Tさん:スタッフさんに勧められたのがきっかけでした。私も最初は「なんで農業? 私の課題はコミュニケーションなのに」と正直、疑問があって。 でも前回初めて参加してみて、その理由が体感として分かった気がしたんです。

藤賀:具体的には、どんな感覚だったんですか?

Tさん:農園で陽の光を浴びながらみんなで土に触れていると、頭で考えるより先に、自然と言葉を交わしている瞬間がたくさんあるんです。

みんなでナスを収穫しているときに「あ、これ大きいからオススメですよ!」と思わず声をかけたり、カモミールの香りに触れて「うわー、いい匂い!」と感動したり。

藤賀:確かに、身体を動かしているときは、「うまく言わなきゃ」と悩むことって少なそうですね。

Tさん:そうなんです。普段の生活で「素直に振舞おう」と意識しても、行動に移すのは難しいですよね。 でも農園なら、身体を動かしているうちに、感情をごく自然に表に出せている実感があります。

相手への気遣いも、やらなきゃと無理にするものではなく、自然と生まれてくるものなんだな、と。「頭で考えすぎずに人と関わる」という練習が、ここでは無理なくできるんです。

実際にTさんの話を聞いて、私の中の疑問が少しずつ解けていきました。

いつもの場所、いつもの人間関係の中で自分を変えるのは難しい。けれど、「気持ちいい」と感じたままに声に出せる場所なら、凝り固まったコミュニケーションの癖も、少しずつほぐれていくのかもしれないなと感じました。

乱れた生活リズムを整える。
農作業が「働くための土台づくり」に

Tさんの実体験を聞いて、「なぜ農作業でそんな変化が起きるんだろう?」とさらに興味が湧きました。 そこで、プログラムを運営するスタッフの久保さんにも、支援員の視点からお話を伺ってみました。

支援スタッフの久保

藤賀:Tさんのお話、すごく印象的でした。ご本人も「最初は半信半疑だった」と仰っていましたが、なぜ農作業をするだけで、あのような心の変化が生まれるのでしょうか?

久保:でも実は、農作業ってメンタルヘルスのケアとして、すごく理にかなっていると言われているんです。

藤賀:理にかなっている、ですか?

久保:はい。シンプルに言うと、身体のリズムが整うんです。

日光を浴びて一定のリズムで作業することで、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の分泌が増えて、自律神経が整いやすくなるといわれています。藤賀さんは最近、よく眠れていますか?

藤賀:うーん、仕事が忙しいと、たまに寝つきが悪い時はありますね。

久保:ですよね。利用者の方からも、「農作業をした日は久しぶりによく眠れる」という声をよく聞きます。適度な運動になりますし、お腹が空く感覚を取り戻して、「食生活が変わった」という方もいました。

藤賀:どんな変化があったんですか?

久保:以前はジャンクフードばかりだった方が、農園での収穫をきっかけに自炊をするようになって。「朝起きた時の身体の重さが消えて、午前中から頭がスッキリ働くようになった」と仰っていました。

藤賀:リフレッシュになるだけではなく、働き続けるための「身体づくり」そのものに繋がっているんですね。

久保:その通りです。安定して長く働くためには、まず「食事・運動・睡眠」という土台が必要です。農作業は、そのすべてを自然な形で整えてくれるんですよ。

会社と家の往復では出会えない。
「生きている感覚」を取り戻せる時間

Tさんや久保さんのお話を聞いて、期待と疑問が入り混じった状態で、農園へ。

ここからは、実際に私が現地で身体を動かして感じた、体験の様子をお届けします。

【この日のスケジュール】

10:00~11:00 赤紫蘇やナスの収穫
11:00~11:15 休憩
11:15~12:00 ゴマの収穫

今回体験に伺ったのは、東京都日野市にある石坂ファームハウスさん。あたりには一面の田んぼが広がっていて、「東京にもこんな場所があったんだ」と思うほど車通りも少なく、のどかな時間が流れていました。

到着して準備をしていると、オーナーの石坂さんが冷蔵庫から紫蘇ジュースを出して、みんなに振舞ってくれました。

「紫蘇ジュースはね、夏バテに効くの。クエン酸も入ってるから、疲れも取れやすくなるわよ」

一口飲むと、キュッと甘酸っぱくて、身体に染み渡る美味しさ。 一杯のジュースをきっかけに、利用者の方もスタッフも自然と会話が弾みます。

「今日はこの赤紫蘇の季節なので、みんなで収穫しましょう」。そう言う石坂さんの後に続いて、私たちは畑へ向かいました。

畑に入ると、自分の身長ほどもある赤紫蘇が一面に。 葉をかき分けると、紫蘇の濃い香りがふわっと漂います。スーパーで買う野菜とは違う、採れたての香りの強さに驚きました。

一通り収穫を終えて休憩をしていると、「あそこの井戸水で涼んでいって」と石坂さんが声をかけてくれました。

ポンプから勢いよく溢れ出す水は、驚くほどの冷たさ。

「気持ちいい……!」 と、思わず顔や首にもバシャバシャとかけてしまいました。クーラーとは違う、身体の芯から熱が引いていく感覚です。

ひと休みした後は、次の作業へ。この日、特に感動したのが「ゴマの収穫体験」でした。

教えてくれたのは、農園のおばあちゃん。「ゴマがどんなふうに取れるか知ってる? この乾燥させた鞘(さや)の中にたくさん入ってるのよ。ほら、やってみて」

言われた通りに乾燥した茎を振ったり、鞘を開いてみたりすると、中から馴染みあるゴマが無数に出てきて驚きました。

市販のゴマはね、ほとんどが外国産。ここで育ったゴマの味をぜひ食べてみて」。 おばあちゃんはそう言うと、採れたばかりのゴマをその場で炒ってくれました。

「熱いから気を付けてよ」と差し出されたゴマを口に入れて、嚙んだ瞬間にハッとしました。

「こんなにクリーミーでおいしいんだ」。 みんなで驚きながら、「おかわりいいですか?」と、ゴマをパクパク口に運ぶ手が止まりません。

「農作業中って、『いま目の前のこと』に集中していて、余計なことを考えていなかったな。

ひと通り作業を終え、休憩しているときにふと気づきました。

普段の仕事は、PC画面の向こう側にいる誰かに届けるものが多く、「この仕事はどこに繋がっているんだろう?」と実感が持ちにくくなる時があります。

また、チャットやオンラインでのやり取りが多く、画面上のテキストを前に頭の中だけで考えて、体は動いていないのにどっと疲れてしまうときも。

そんな時こそ、農園に来て、無心で土や野菜に向き合い、身体を動かす。 そのシンプルな作業が、希薄になっていた「実感」を取り戻させてくれるし、考えすぎて止まっていた時間を、再び動かしてくれる気がしました。

行き詰まったときに身を置ける「もう一つの居場所」があるだけで、悩みながらも前に進んでいけるのかもしれません。

「目の前の田んぼもうちのなんだけど、来月稲刈りなのよ。よかったら来てね。」

帰り際に、おばあちゃんがそう笑って誘いかけてくれたことに、ほっとした気持ちになりながら、私たちは帰路につきました。

自宅療養だけでは得られない「気づき」を。
休職・離職期間を、生き方と向き合う時間に

今回ご紹介した農園体験のように、リヴァトレには「自宅で休んでいるだけでは得られない体験」があります。

休職・離職期間は、単なる空白期間ではありません。 いつもとは違う環境で視野を広げ、自分自身や「これからの生き方」とじっくり向き合うための、貴重な時間でもあると考えています。

もちろん、復帰後に安定して働き続けるための「生活習慣の土台づくり」や、再発を防ぐための「実践的な準備」を行うプログラムもしっかりと整っています。

「視野を広げる体験」と「着実な準備」の両輪があるからこそ、あなたに合った「回復のきっかけ」と「今後の道筋」がきっと見つかるはずです。

まずは週2日からの通所で、少しずつ動き出してみませんか?

「資料で概要だけまず知りたい」 「まずは話だけ聞いてみたい」と思ってくださった方は、ぜひお気軽に資料請求・オンライン説明会・見学にお申し込みください。

■リヴァトレについて詳細はこちらからご覧ください

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この記事を書いた人
藤賀樹

株式会社リヴァ ブランディング部

2000年東京都生まれ。休学を経て早稲田大学を卒業後、25卒として(株)リヴァへ入社。ブランディング部にてインタビュー記事作成や動画編集など、主にコンテンツ制作に携わる。

好きな瞬間は「モヤモヤすることの背景をうまく言葉にできたとき」。

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