株式会社リヴァの社員である松浦 秀俊と大志万 雄介が調査協力した、京都大学大学院 医学研究科の博士論文がこの度、医療と公衆衛生に関する国際的な学術誌「Health Expectations」に掲載されました。
本研究は、双極症の当事者・家族・医療者が協働し、「双極症の方々の生活を支えるための必須情報セット」を開発したものです。
その過程で、医療者が重視する情報と、当事者・家族が求める情報の間に、明確な視点の差があることが示されました。
研究の概要
この研究は、双極症の当事者ご自身が治療に積極的に参加し、社会生活を続けるために「最低限知っておきたい情報」をまとめたセットを作ることを目的としました。
当事者、家族、医療者(精神科医、心理士など)が参加し、国内外の信頼できる情報源から集めた126項目の候補を、「最重要」「重要」などで評価。話し合いと評価を重ね、最終的に23項目の「必須情報セット」として絞り込みました。
研究で明らかになった、当事者と医療者の視点ギャップ
本研究の重要な発見の一つは、当事者・家族と医療者の間で、必要とされる情報の優先順位が異なる点です。
分析の結果、医療者は「治療」や「病気の知識」を重視する傾向があったのに対し、当事者・家族は「日常生活で役立つこと」や「困ったときの具体的な対応」をより重視していました。
例えば、「生活習慣の工夫」や「家族のサポート方法」といった項目は、医療者の評価よりも、当事者・家族からの評価が特に高かった項目です。
また、「再発」「コントロール」といった医療者が使う言葉が、当事者には分かりにくい可能性や、「治療をやめると再発しやすい」といった表現が、当事者の気持ちに配慮した工夫を要することなども指摘されました。
掲載誌「Health Expectations」について
医療・ヘルスケア分野における一般市民や患者の参画・関与(Public and Patient Involvement)を専門とする、国際的なピアレビュー(査読付き)学術誌です。
https://onlinelibrary.wiley.com/journal/13697625
掲載論文 タイトル
Development of an Essential Information Set for Supporting Life With Bipolar Disorder: A Modified Delphi Study With Patients, Families and Healthcare Professionals
著者: Rieko Nagata, Takashi Amagasa, Takashi Okura, Kayoko Ichikawa, Yoshitaka Nishikawa, Mayumi Toyama, Hiroshi Okada, Yoshimitsu Takahashi, Yu Sakagami, Eiji Suzuki, Norio Ozaki, Takeo Nakayama
2025年10月22日 初版公開